約6万5,000人の子ども対象に調査、7.2%が食物アレルギー診断
国立成育医療研究センターは3月27日、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)約6万5,000人のデータから、子どもの食物アレルギーと親の育児ストレスの関連性について分析し、食物アレルギーの子どもを持つ親は、育児ストレススコアが有意に高くなることが明らかになったと発表した。この研究は、同センターエコチル調査研究部・アレルギーセンターの大矢幸弘氏、山本貴和子氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Allergy」に掲載されている。
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これまで食物アレルギーがある子どもとその家族について、食物アレルギーが不安や生活の質の低下と関連するという報告は多くあった。しかし、子どもの食物アレルギーの種類や数による親の育児ストレスに関する報告はなかった。
今回研究グループは、日本の大規模調査であるエコチル調査でParenting Stress Index-Short Form(PSI-SF)を用いて、子どもの食物アレルギーと親の育児ストレスについて検討した。具体的には2011年1月~2014年3月までにエコチル調査に登録した、北海道から沖縄まで日本全国15の地域の親子を対象とした。統計分析の対象となる子どもは6万5,805人で、そのうち、2歳時点で7.2%の子どもが食物アレルギーの診断を受けていた。
鶏卵で有意、牛乳・小麦・ナッツでは明確な関係認めず
分析の結果、子どもに食物アレルギーの診断があると、親の育児ストレススコア(係数0.47、95%CI 0.19–0.75、p=0.001)が有意に高くなることが明らかとなった。また、子どもの食物アレルギーの種類別による分析でも、鶏卵アレルギーについて同様の傾向が見られた。ただし、牛乳、小麦、ナッツアレルギーでは明確な関係性は認められなかった。
医療者は親のストレスにも注意を払いながら診療することが重要
今回の研究で、子どもの食物アレルギーの診断が育児ストレスを有意に増加させることが明らかになった。さらに、食物アレルギー別の分析でも子どもの鶏卵アレルギーが親の育児ストレスを増加させていたこともわかった。鶏卵アレルギーは日本で最も一般的な食物アレルギーであるが、日本では多くの加工食品や菓子類に鶏卵が含まれており、親は常に意識する必要があることから、他の食品よりもストレスが大きくなる可能性が考えられた。
「今回の研究は重症度を考慮した結果ではないので、重症度を考慮したさらなる調査も必要。医療提供者は食物アレルギーを持つ子どもの親のストレスに注意を払いながら日常の診療を行う必要がある」と、研究グループは述べている。
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