GPPとAGEPの見分けは困難だった
大阪公立大学は3月18日、皮膚科医でも間違いやすい2つの皮膚科疾患を見極める新たな指標を開発したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科 皮膚病態学の鶴田大輔教授、高市美佳前期研究医と、米国メイヨークリニック(Mayo Clinic)のAlavi教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Academy of Dermatology」にオンライン掲載されている。
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汎発性膿疱性乾癬(GPP)と、急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)は、どちらも全身の皮膚が赤くなり、「膿疱」という膿の塊が皮膚の中にできる病気だ。ひどい場合は発熱や全身倦怠感、他の臓器にも障害が及び、重症となることがある。
これら2つの疾患は見た目がとてもよく似ており、血液検査の所見などでも特徴的な差がなく見分けることが難しいが、経過や治療法は異なるため、効果的な治療を行う上で2つの疾患を区別することは重要だ。
両疾患の臨床的特徴の違いをもとに、高精度のGPP/AGEPスコアリングシステムを開発
研究グループはGPPとAGEPを鑑別するための重要な特徴を明らかにするため、米国のメイヨークリニックと協力して、約20年の間に2つの医療機関を受診したGPP患者54例とAGEP患者63例を対象に、臨床症状・検査所見などのデータを集め、このよく似た2つの病気を見分ける鍵となる症状の探知に取り組んだ。
その結果、GPP患者では、関節痛、乾癬または関節炎の病歴、乾癬様の皮疹などの症状が多かったのに対し、AGEP患者では、薬剤アレルギーの病歴、下肢の内出血などの症状がより多くみられた。研究グループは、これらの臨床的特徴がGPPとAGEP患者を判別するための診断指標になると考え、同診断指標を用いてGPPとAGEPを見分けるためのGPP/AGEPスコアリングシステムを開発した。さらに、同システムの予測性を評価したところ、感度(0.85)と特異度(1.0)がともに高く、高い判別性能を持つことが証明された。
臨床医が両疾患を鑑別するための実用的な診断指標確立を目指す
今回の研究成果は、臨床現場で医師がGPPとAGEPを見分ける際の一助となる可能性があり、素早い診断と適切な治療選択につながることが期待される。
「今後は臨床医が2つの疾患を鑑別するために実用的に使用できる診断指標の確立を目指す。本研究は過去のデータを解析する後ろ向き研究だったが、スコアリングシステム実用化のため、現在から未来に向かってデータを集める前向き試験で、さらに検証を進める予定だ」と、研究グループは述べている。
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