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ステージ4肺がん、電カルデータから高精度に予後予測するAIを構築-近大ほか

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2024年03月21日 AM09:10

AI学習に有用な、質の高い患者情報を多数収集するには?

近畿大学は3月14日、ステージ4の肺がん患者の症例データを収集し、日本人における肺がんの予後を高い精度で予測するAIモデルを構築したと発表した。この研究は、同大医学部内科学教室腫瘍内科部門の林秀敏主任教授、和歌山県立医科大学附属病院呼吸器内科・腫瘍内科の藤本大智講師らを中心とする研究グループによるもの。研究成果は、日本臨床腫瘍学会学術集会(2024年2月)で発表された。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本において、肺がんによる死亡者数は男女ともに部位別で最も多く、なおかつ予後が改善されない現状が続いている。肺がんは進行度からステージ1~4に分類され、ステージ4の患者が多くを占める。肺がん患者の医療・ケア方針の決定には、医療者が妥当性の高いアプローチと目標を確立することが不可欠であり、患者や家族に対して適切で重要な情報を提供し、方針を共有することが重要だ。特に予後予測は、方針決定において非常に重要な情報となるが、同じステージ4の肺がんであっても患者によって臨床的背景が大きく異なり、使用できる薬物療法も異なるため、正確な予後予測は困難である。

近年、患者個々の複雑な臨床的背景と予後をAIに学習させることによって、個人の予後を正確に予測するAIモデルの実装が検討されている。AIの正確な学習のためには、多数の患者情報を質高く収集する必要があるが、近年のICTの進歩により、電子カルテから実地臨床情報を質高く収集するシステムが開発され、これを活用することで大規模なデータ収集が可能となってきている。

6,751例の電カル情報から「」を活用してデータベース構築

研究グループは、免疫チェックポイント阻害薬承認後の2016年から2020年までに、全国16の医療機関でステージ4肺がんと診断された6,751例のデータを対象に、予後の検証と予後予測AIモデル開発の検討を行った。

検討にあたり、電子カルテデータ等のリアルワールドデータを標準化・構造化して管理・統合する入力支援システム「Cyber Oncology」を用いて抽出した情報からデータベースを構築した。採血データ等のすでに電子カルテ内で構造化されているデータについてはCyber Oncologyに自動連携し、転記等のプロセスで誤りが生じない収集状況をつくった。さらに高品質な患者情報を収集するため、アブストラクタ(プロセス管理者)が定期的に医療機関を訪問し、必要なデータの入力を補助した。入力されたデータは各医療機関のCyber Oncologyにおいて匿名化された上で、高セキュアなネットワークを通じてデータセンターへ送信され、特定非営利活動法人西日本がん研究機構がとりまとめた。

3年生存率約30%、AI学習から生存可能期間を高精度に予測

その結果、日本の実地臨床におけるステージ4の肺がん患者の生存期間中央値は16.6か月であり、3年生存率が約30%であることが示された。また、患者データをAIに学習させ、それをテスト患者において予測精度を検討したところ、診断日から180日、360日、540日、720日、900日、1,080日の生存が可能かという予測において、どの期間においても約80%という高い精度で予測可能であることが示された。また、AIに患者の期間内における生存確率を予測させ、その予測された生存確率によって患者を4グループに分類したところ、AIの予測通り、予後が良好群、中間良好群、中間不良群、不良群の4つに大きく分かれることが示された。

再現性と信頼性の高い予後予測の情報から医療・ケア方針を決定できる可能性

現状、実地臨床においては、医師個人の経験や過去の臨床研究データから予後予測を行い、妥当性の高い医療・ケア方針を決定している状況である。しかし、このAIモデルを実装することにより、再現性と信頼性の高い予後予測の情報を全ての医師が得ることができ、それを患者と共有することで妥当性の高い医療・ケア方針を決定することができる可能性が示された。「今後も研究で示されたAIモデルの検討を続け、本データを用いたさらなる研究を行う予定だ」と、研究グループは述べている。

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