子どもの食の質に、養育者の食事リテラシーはどのように影響するか
国立成育医療研究センターは3月14日、小学校5年生と中学校2年生の子どものいる家庭を対象として、養育者の健康的な食に関するリテラシー(知識や能力)が子どもの食にどのような影響を与えるのかを研究し、養育者の知識や態度が低いほど、子どもは朝食を抜きやすい傾向にあることがわかったと発表した。この研究は、同センター研究所社会医学研究部の石塚一枝氏、森崎菜穂氏、新潟県立大学人間生活学部健康栄養学科の堀川千嘉氏、村山伸子氏らの研究グループによるもの。研究成果は、2つの論文に分かれているが、共に「Appetite」に掲載されている。
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養育者が朝食を重視していないと子どもが感じた場合には、子どもが朝食を抜く傾向があることがこれまでの研究からわかっており、また子どもの食習慣は幼少期に形成されるため、養育者の健康な食に関するリテラシーは、子どもの栄養摂取に関して重要な要素といえる。平常時には、子どもたちは学校給食基準規則に基づき、1日に必要なエネルギーや栄養所要量の3分の1以上を満たす給食をとっている。しかし、多くの教育施設が休校となったコロナ禍の緊急事態宣言時においては、家庭での昼食に代わっており、その食事の質は、それぞれの養育者の食に関するリテラシーに依存することになった。そのため、養育者の健康な食に関するリテラシーが子どもの食の質にどのような影響を与えるのかを明らかにするため、研究を実施した。
小学5年または中学2年がいる家庭対象、2020年末に調査
2020年度の住民基本台帳に基づき、日本全国から層化二段階無作為抽出法で抽出した小学5年生(10~11歳)または中学2年生(13~14歳)の子どもがいる3,000世帯(有効回答数:1,520世帯)を対象に、2020年12月(新型コロナウイルス感染症 第3波ころ)に調査を実施した。
養育者に対しては、「知識」「態度」「スキル」それぞれの設問に、5段階の尺度で回答を得て、「知識」「態度」は10点満点、「スキル」は15点満点、合計35点満点で評価した。知識については、「栄養バランスの取れた食事とはどのようなものか知っている」「日本型食生活の中で主食、主菜、副菜とはどのようなものか知っている」かについての問いを設けた。態度については、「栄養バランスの取れた食事は子どもの成長に重要である」「子どもには主食、主菜、副菜の揃った和食中心の食事を与えるようにしている」、スキルについては「5種類以上の食材を使った食事を作るのは難しいですか?」「栄養バランスの取れた食事を作るのは難しいですか?」「主食、主菜、副菜の揃った和食を用意するのは難しいですか?」を設定した。また、子ども自身に「朝食をとったかどうか」を質問し、養育者に「バランスの取れた食事(「肉、魚、卵」と「野菜」を両方1日に2回以上含む)を取れているかどうか」などを質問した。
子が「朝食に十分な時間が取れない」ことに、養育者の知識/態度が影響
朝食を週1回以上抜くと回答した子どもは13%(198世帯)だった。養育者の食に関するリテラシーのうち「知識」や「態度」の得点が高い家庭の子どもは朝食を抜く割合が低くなっていた。また、養育者の「態度」に関わるスコアが低い家庭では、「朝食に十分な時間が取れないこと」が、子どもが朝食を抜くことに影響していたことがわかった。
養育者のリテラシーが低いほど、子がバランスの良い食事をとる割合は大幅に低下
また、養育者の食に関するリテラシーの低い家庭ほど、「コロナ禍になってから食事の準備に充てられる時間が減った」「食事の準備をする心の余裕がなくなった」「食品や食事を選択する経済的余裕が低下した」と回答する割合が多く、食事の準備に対する負担感が高い傾向にあった。緊急事態宣言に伴う休校では給食が提供されなかったため、バランスの取れた食事がとれた子どもの割合は大幅に低下しており、養育者の食のリテラシーが低い家庭ほどその傾向は顕著にみられた。具体的には、スコアが最も低い4分位(Q1)で51.8%、高い4分位(Q4)で85.2%だった。
研究結果より、養育者の食に関するリテラシーが低いと、子どもが朝食を抜く割合の増加や、子どもの食の質の低下につながることを示唆された。「子どもが適切な食事と栄養を確実に摂取できるようにするためには、養育者に健康な食に関する知識、態度、スキルなどを向上させるための教育と支援が必要であると考えられる」と、研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース