厚生労働省は、後発品の金額シェアを「2029年度末までに65%以上」とする新目標を14日の社会保障審議会医療保険部会に示した。主目標を「後発品の数量シェアを全ての都道府県で80%以上」とする数量ベースの目標を継続する一方、バイオシミラーの新目標値と後発品の金額ベースの目標値は副次目標に位置づける。29年度までの第4期医療費適正化計画基本方針を期中改定し、後発品新目標を盛り込む。
後発品の数値目標は、24年度から5年間の同基本方針で、従来の数量ベースから今年度中に金額ベース等の観点を踏まえて見直すこととされている。薬価調査における後発品使用割合は、昨年9月調査の速報値で80.2%に達する一方、バイオシミラーも含めた金額シェアでは56.7%と乖離がある。
そこで厚労省は、数量シェア拡大での医療費適正化が難しくなる中、バイオシミラーの使用推進や長期収載品の選定療養などにより「後発品の金額シェアを29年度末までに65%以上」とする新たな目標を設定することにした。
ただ、金額ベースでの目標達成を追求すると、高薬価品の切り替えのみで取り組みが進む可能性を踏まえ、現行の「後発品の数量シェアを全ての都道府県で80%以上」を主目標とすることは変更しない。金額シェアは後発品やバイオシミラーの上市タイミング、長期収載品との薬価差の状況等の影響を受けることに留意が必要とした。金額ベースの目標年度も後発品の供給不安が続いている足下の状況から柔軟に対応する方針だ。
また、限定出荷となっている品目を含む成分を除いた数量・金額シェアを参考として示し、後発品の安定供給状況に応じた使用促進を図ることに加え、薬効分類別での数量・金額シェアの見える化により、取り組みを促進すべき領域を明らかにする。26年度末をメドに状況を点検し、必要に応じて目標のあり方も検討する。
委員からは「後発品の安定供給への対応が先決」との意見が相次いだ。渡邊大記委員(日本薬剤師会副会長)は、「数量と金額には一定の差がある。目標達成に向けた分析と、現場でどのようなことをしないといけないのかの具体的な対策をセットで示していただきたい」と要請。「金額ベースでは現場が取り組みにくい」と訴えた。
厚労省医政局の水谷忠由医薬産業振興・医療情報企画課長は部会後、記者団に対し、「数量ベースの目標は、現場の薬局にとって自分たちが扱っているものをどれだけ後発品に置き換えられるかという意味で取り組みやすい。一方で、金額ベースの目標では、決して薬局で金額を意識して切り替えることはないと思う。そういう意味で副次目標とした」と説明した。
■武見厚労相「現場が取り組みやすく」
武見敬三厚生労働相は15日の閣議後会見で、後発品の新目標について、「安定供給を基本としつつ、医療機関の現場が具体的に取り組みやすい目標」との認識を示し、「薬効分類等別で数量シェアや金額シェアを示して取り組みを促進すべき領域を明らかにするなどして、関係者が具体的に取り組みやすいようにしていく」との考えを示した。