肥満症治療薬は手術前の胃残留量増加に関連
ウゴービやオゼンピックのような肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)の使用者は、全身麻酔を要する手術前でも胃残留量の多いことが、新たな研究から明らかになった。研究グループは、GLP-1受容体作動薬の使用者の場合、現行のガイドラインで推奨されている手術前の絶食時間では不十分な可能性を示唆する結果だとの見方を示している。米テキサス大学健康科学センターヒューストン校のSudipta Sen氏らによるこの研究結果は、「JAMA Surgery」に3月6日掲載された。
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全身麻酔を要する手術では通常、誤嚥性肺炎や窒息のリスクを防ぐために手術前の絶食が求められる。Sen氏らは、全身麻酔下にあったGLP-1受容体作動薬の使用者が、手術中に自分の吐物を誤嚥したとの報告を受けて、GLP-1受容体作動薬の使用と胃残留量の増加との関連を調べることを決めたと話す。
対象は、2023年6月から7月の間に全身麻酔下での待機的手術が予定されていた18歳以上の患者124人(平均年齢56歳、女性60%)で、このうちの62人(50%)はGLP-1受容体作動薬を週に1回使用していたが(曝露群)、残る半数は使用していなかった(対照群)。主要アウトカムは、胃超音波検査で評価した多量の胃残留物で、具体的には、固形物、濃度の高い液体、または1.5mL/kg以上の透明な液体がある場合と定義された。
その結果、多量の胃残留物が確認された対象者の割合は、曝露群で56%(35/62人)であるのに対し、対照群では19%(12/62人)であることが明らかになった。結果に影響を及ぼす因子を調整して解析した結果、GLP-1受容体作動薬の使用により多量の胃残留物が認められる可能性が30.5%上昇することが示された。
Sen氏は、「GLP-1受容体作動薬を使用している患者では、手術前に絶食していたにもかかわらず、その半数以上に手術前の胃超音波検査で多量の胃残留が認められた」と振り返る。研究グループは、「これらの結果は、米国麻酔科学会が2023年に発表した、手術前のGLP-1受容体作動薬の使用の有無をスクリーニングし、その使用に付随するリスクを患者に知らせることを求める推奨内容と一致する」と述べる。
ガイドラインではまた、医師が、手術前にはGLP-1受容体作動薬の使用を控えることを検討すべきことも推奨されている。Sen氏は、「患者は、外科医や麻酔科医にこの薬の使用の有無を正直に伝える必要がある。この情報は、選択的手術の前に薬物の投与を調整したり、長期絶食を勧めたり、必要であれば選択的手術を再スケジュールするなど、適切な推奨を提供するために極めて重要だからだ」と主張する。また同氏は、「GLP-1受容体作動薬使用者の手術前の絶食時間を延長する新たな治療ガイドラインが必要かもしれない」と話している。
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・Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonist Use and Residual Gastric Content Before Anesthesia
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