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原発性アルドステロン症の17%で見逃し、最新測定法に基づき診断基準変更-東北大

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2024年03月14日 AM09:10

PAは心血管病の発症リスク高いが現場で見逃されやすい

東北大学は3月8日、(PA)診断に必須のアルドステロン測定法について、最新のCLEIA法は、従来のRIA法と比較して血圧ホルモンであるアルドステロンをより正確に測定できることを明らかにし、最新測定法に基づくPAの新診断基準を確立したと発表した。この研究は、同大学病院糖尿病代謝・内分泌内科の手塚雄太医員、尾股慧助教、小野美澄助教、大学院医学系研究科の佐藤文俊客員教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Hypertension Research」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

原発性アルドステロン症(PA)は、高血圧患者の10%程度を占め、全国で約400万人が罹患している。PAは、腎臓の上にある副腎という臓器から、血圧ホルモンであるアルドステロンが過剰に分泌される疾患であり、その結果として、、低カリウム血症、動脈硬化を引き起こす。PAの特徴は、心臓病、脳卒中の発症リスクの高さであり、一般的な高血圧症(本態性高血圧症)と比較して、心血管病の発症リスクが2~4倍とされている。そのため、高血圧診療ではPAの早期診断と治療の適正化が重要である。早期に適切な治療を開始できれば、心筋梗塞や脳梗塞などを予防することが可能だが、実際の現場ではPAが見逃されやすく、心不全や慢性腎臓病などの合併症を引き起こしてからPAと診断される場合も少なくない。

アルドステロン測定方法変更後、暫定的な診断基準が使用され精度検証は不十分だった

原発性アルドステロン症の診断は血液中のアルドステロンやレニンの測定から始まる。具体的には、機能確認検査(カプトプリル負荷試験や生理食塩水負荷試験など)でアルドステロンを測定し、過剰分泌を確認する。長年、これらの検査では一定の診断基準を用いてPAを診断していたが、2021年にアルドステロン測定方法がRIA法からCLEIA法に変更となり、それ以降は十分な検証が行われないまま換算値を用いた暫定的な診断基準が使用されてきた。現在まで、PAと診断されるべき症例が適切に診断されているかどうかは明らかでなく、CLEIA法とRIA法のアルドステロン測定系の差異の詳細な検討や、現在の診断基準のPA診断精度の検証が望まれていた。

最新測定法のCLEIA法は従来法より正確、新しい診断基準の必要性を示唆

今回、研究グループは、同大学病院で診療を受けたPAおよび類縁疾患患者の残余血液検体を使用して、アルドステロンの最新測定法のCLEIA法と従来法のRIA法のアルドステロン測定値の差異を検討した。その結果、CLEIA法は、RIA法と比較してより正確にアルドステロンを測定でき、標準アルドステロン濃度との比較でRIA法では72~80%の測定値の差がみられたのに対し、CLEIA法では0.3~2.4%の差に留まった。さらに、両者の測定値の乖離は77%に上ることを明らかにした。RIA法はアルドステロン値が比較的高値になる傾向があり、CLEIA法でアルドステロンを測定するように各診断基準を変更する必要性が示唆された。

現在の診断基準、手術で治るはずの患者も含めた17%が見逃されると判明

次に、同病院でカプトプリル負荷試験を受けてPAまたは本態性高血圧と診断された患者338人を対象に、現在の暫定的な診断基準のPA診断精度の検証を行った。今回は、PA診断方法の一つであるカプトプリル負荷試験に注目して、従来RIA法でPAと診断されていた患者が、CLEIA法での診断基準でどのように判定されるかを確認した。その結果、PAと診断される患者の17%(6人に1人)が現在の診断基準では見逃されてしまうことがわかった。その中には、手術でPAが治るはずの患者も含まれていたため、実測に基づく有用な診断基準を作成し、患者を見逃さない取り組みが必要である。

新診断基準を検討、より的確なPA診断可能なアルドステロン・レニン比を提案

最後に、CLEIA法に適したカプトプリル負荷試験の新診断基準を検討し、現在の診断基準(・レニン比>10ng/dL / ng/mL/hr)から新基準(・レニン比>8.2ng/dL / ng/mL/hr)に変更することで、より的確にPAの診断が可能であることを示した(感度87.4%、特異度98.0%)。また、RIA法と比較して、CLEIA法を用いた診断方法はPAの原因が片方の副腎か、両方の副腎かを判断する点において優れている可能性があることも見出した(p<0.001)。

適切な診断・治療により心血管病防ぐことにつながると期待

今回使用したCLEIA法は、アルドステロンに特異的に結合する第一抗体と、その化学標識に結合する第二抗体を用いたサンドウィッチCLEIA法と呼ばれるものである。アルドステロンに特異的な第一抗体はミシシッピ大学のCelso E. Gomez-Sanchez教授が開発したもので、RIA法とは一線を画した測定精度を有している。サンドイッチCLEIA法はアルドステロン関連疾患の病態の正確な理解に重要であり、今後の病態解明に貢献することが期待される。

原発性アルドステロン症は、高血圧の治療を行うだけでは心血管病や脳卒中などの合併症を防ぐことができない。しかし、アルドステロンの作用を抑える薬をしっかり内服できれば病状の進行を抑えることができ、病状次第で副腎手術を早期に施すことで完治することが可能である。「今回の研究結果を診療に活かすことで、より多くの原発性アルドステロン症の患者が適切な診断、治療を受け、心血管病がなく元気な生活を送れるようになると考えている」と、研究グループは述べている。

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