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心不全の悪化、加齢による白血球のY染色体喪失に起因するメカニズム解明-国循ほか

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2024年03月13日 AM09:30

加齢で白血球からY染色体が失われる「LOY」、がんなどの病気に関連するが心不全は?

国立循環器病研究センターは3月11日、男性の加齢に伴う血液のY染色体喪失が心不全を悪化させる仕組みを明らかにしたと発表した。この研究は、同大研究センター研究所・心血管モザイク研究室の佐野宗一室長、米国バージニア大学のKenneth Walsh博士らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Cardiovascular Research」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

男性はXYの性染色体を持つが、加齢とともに血液の白血球からY染色体が失われることがある(ただし、性同一性と染色体の構成が常に一致するわけではない)。この現象は、loss of Y chromosome(LOY)と呼ばれ、アルツハイマー病やがんなど、加齢に伴う病気に関連している。研究グループは、白血球のY染色体が無い雄マウスを用いて白血球のLOYと心不全の関係を研究している。しかし、LOYによって心不全が悪化する詳しい仕組みは明らかでなかった。

Y染色体上のUty遺伝子を欠損した白血球を持つマウスは心不全になりやすい

研究グループは、マウスの白血球にあるY染色体の中の特定の遺伝子(Uty、Kdm5d、Ddx3y、Eif2s3y)が失われることが心不全を悪くするのではないかと考えた。そこで、これらの遺伝子のいずれかを欠損した白血球を持つマウスを作製し、それぞれのマウスの心不全のなりやすさを解析した。

その結果、Uty遺伝子がない白血球を持つマウスだけが、普通のマウスよりも心不全になりやすいことがわかった。したがって、加齢に伴い白血球のY染色体が無くなることでUty遺伝子も失われ、そのことが心不全を悪化させる原因になっているのではないかと考えられた。

Uty遺伝子欠損マクロファージが線維化を促進

Utyは他の遺伝子の転写を調整する分子であることから、続いて、Uty遺伝子を欠損する白血球の心臓での役割を解析した。今回の研究では、白血球の中でも特にマクロファージに注目して解析した。

マクロファージには炎症を亢進するものや、線維化を促進するものなどがあるが、Uty遺伝子を欠損したマクロファージは、線維化を促進するマクロファージになりやすいことがわかった。そして、これが、心不全が悪化する一因と考えられた。血液のY染色体が失われた男性の心臓の検査を実施したところ、線維化が強く引き起こされていることがわかった。

白血球LOYの男性は寿命「短」、その仕組みの解明も今後の課題

研究グループは今後、白血球からのY染色体喪失が、心不全だけでなく他の疾患にどのような影響を与えるかについて詳しく研究することが重要だと考えている。また、白血球のLOYのある男性では寿命が短いことも明らかになっており、その仕組みの解明も今後の大きな課題だ。今後、LOYの研究によって、男性の寿命を延ばすための方法を見つけることが期待される。

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