DVH評価による治療計画に課題、ドジオミクス解析による評価は?
広島大学は3月5日、ドジオミクス手法を用いて放射線治療を施行した局所前立腺がん患者のサブグループ解析を行い、放射線治療後の生化学的無再発生存期間に与える影響は治療前の患者背景によって異なることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科の村上悠大学院生、河原大輔助教、永田靖名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「British Journal of Radiology」に掲載されている。
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従来の放射線治療計画は、線量体積ヒストグラム(DVH)に基づいて実施されているが、このDVHを用いた評価では治療計画の質を十分に評価することができない問題点があった。近年、放射線治療の線量分布から線量の強度、形状、テクスチャーなどの情報を定量化するドジオミクス解析が注目を集めている。研究グループはこれまでに、あるドジオミクス特徴量が前立腺がんにおける放射線治療後の生化学的再発に関連することを明らかにしている。今回の研究では、このドジオミクス特徴量を用いて治療前の臨床情報に基づくサブグループ解析を行い、患者背景の違いが予後に与える影響を検証した。
治療前PSA高値ほど生化学的再発曲線が分離の傾向、グリソングレードサブグループでも同様
研究グループは、2施設のデータを統合した後、患者を治療前PSA値とグリソングレードグループに基づくサブグループに分割した。その後、生化学的再発に関連するドジオミクス特徴量の中央値をカットオフとして、患者を2群に分割し、生化学的無再発期間をエンドポイントとしたカプランマイヤー解析を実施した。
生化学的再発に関連する3種類の特徴量を用いたカプランマイヤー解析の結果、治療前PSA値が高いほど、生化学的無再発曲線が分離する傾向を示した。具体的には、治療前PSA値が10ng/ml以下と比べて、治療前PSA値が10ng/mlを超える症例では、生化学的再発曲線が分離していることがわかった。この傾向は特徴量の種類によっても異なり、特にPTVから抽出した特徴量で最も顕著であることがわかった。 (7年時の生化学的無再発率:86.7% vs 76.1%, P<0.01)。また、グリソングレードグループを用いたサブグループ解析でも同様の傾向が確認された。
治療前の患者背景が悪い症例、ドジオミクスを用いた治療計画が予後改善につながる可能性
研究グループは、世界で初めて前立腺がんの生化学的再発に関するドジオミクス特徴量を発見し、今回の研究でその特徴量は治療前の患者背景によって大きく変化することを明らかにした。これにより、ドジオミクスを用いた治療計画を行うことで予後が改善する可能性が示唆され、その恩恵は治療前の患者背景が悪い症例ほど大きい可能性があることがわかった。「今後は、この特徴量の堅牢性を多施設で検討するとともに、前向き介入試験によって研究結果の妥当性を検証する必要性がある」と、研究グループは述べている。
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・広島大学 研究成果