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かかりつけ医、コロナ禍で日本住民の約2割が喪失または変更-慈恵大

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2024年03月08日 AM09:00

コロナ禍で注目されたかかりつけ医機能強化、日本での住民追跡縦断研究はなかった

東京慈恵会医科大学は3月4日、全国的な縦断研究を実施した結果、コロナ禍において、かかりつけ医を持つ住民の約2割でかかりつけ医として相談できる医師がいなくなったか、かかりつけ医の自発的な変更があったことが明らかになったと発表した。この研究は、同大総合医科学研究センター臨床疫学研究部の青木拓也准教授、松島雅人教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Family Practice」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

今般、COVID-19パンデミックをきっかけに、プライマリ・ケアを担う「」の役割に大きな注目が集まっている。医療制度議論においても、かかりつけ医機能の強化が重要な論点になっている。かかりつけ医の存在は、住民に提供される医療の質向上や入院の減少などと関連することが報告されている。これまで日本でもかかりつけ医に関する複数の横断調査が実施されているが、かかりつけ医の有無等が経時的にどのように変化するか、住民を追跡した縦断研究はこれまで国内で実施されておらず、またかかりつけ医が提供する機能が、その変化にどのような影響を及ぼすかは、国際的にも明らかになっていなかった。

コロナ禍1年でのかかりつけ医喪失・変更やプライマリ・ケア機能との関連を住民横断的に検証

今回の研究では、コロナ禍においてかかりつけ医を持つ住民を追跡し、かかりつけ医の喪失や変更がどの程度発生するか、またそれらとかかりつけ医が発揮するプライマリ・ケア機能(≒かかりつけ医機能)との関連を検証することを目的とした。具体的には、COVID-19パンデミック下の2021年5月〜2022年4月に実施されたプライマリ・ケアに関する全国前向きコホート研究(National Usual Source of Care Survey:NUCS)のデータを用いて実施した。NUCSは、代表性の高い日本人一般住民を対象とした郵送法による調査研究。民間調査会社が保有する約7万人の一般住民集団パネルから、年齢、性別、居住地域による層化無作為抽出法を用いて、40〜75歳の住民を選定。そのうち、研究の対象者は、調査開始時点でかかりつけ医を持つ者とした。

追跡期間の12か月間におけるかかりつけ医の喪失または変更を主要評価項目に設定した。かかりつけ医のプライマリ・ケア機能は、Japanese version of Primary Care Assessment Tool(JPCAT)短縮版を用いて、調査開始時点で評価を行った。JPCATは、米国Johns Hopkins大学が開発し、国際的に広く使用されている Primary Care Assessment Toolの日本版であり、その妥当性・信頼性が検証されたプライマリ・ケア機能評価ツールだ。JPCATの下位尺度は、近接性、継続性、協調性、包括性、地域志向性といったプライマリ・ケアの特徴的な機能であり、2023年の医療法改正に盛り込まれたかかりつけ医機能や日本専門医機構の総合診療専門医のコンピテンシーと重なる。統計解析では、多項ロジスティック回帰分析を用いて、年齢、性別、教育歴、世帯年収、慢性疾患数、健康関連QOL(Quality of Life)といった住民の属性の影響を調整し、かかりつけ医の喪失・変更とプライマリ・ケア機能との関連を検証した。

かかりつけ医の喪失12.8%、自発的な変更6.3%

研究では、調査開始時点でかかりつけ医を持ち、追跡調査を完了した725人を解析対象者とした(追跡率92.9%)。解析対象者のうち、追跡期間中に93人(12.8%)でかかりつけ医として相談できる医師がいなくなり、46人(6.3%)で自発的なかかりつけ医の変更が発生した。

高いプライマリ・ケア機能発揮の医師ほど喪失・変更は「少」

また、住民の属性の影響を統計学的に調整した結果、高いプライマリ・ケア機能(JPCAT総合得点が高い)を発揮する医師を持つ住民ほど、かかりつけ医の喪失が少ないことが明らかになった(調整相対リスク比(JPCAT総合得点10点上昇あたり):0.70, 95%信頼区間:0.60–0.81)。また、かかりつけ医の変更についても同様の結果だった(調整相対リスク比(JPCAT総合得点10点上昇あたり):0.73, 95%信頼区間: 0.60–0.88)。プライマリ・ケア機能とかかりつけ医の喪失・変更との関連は、JPCAT総合得点だけでなく、下位尺度得点(継続性、包括性、地域志向性)においても同様に認められた。

かかりつけ医の定着・普及には、かかりつけ医側の機能強化が重要な可能性

今回の研究結果から、かかりつけ医の定着・普及のためには、国民に向けた啓発や情報提供に加え、かかりつけ医側の機能強化の取り組みが重要であることが示唆された。2023年の医療法改正に基づき、現在かかりつけ医機能制度整備の具体的な内容の検討が行われており、今後、実効的な取り組みにつながることが期待される。今回の研究成果をもとに、かかりつけ医の定着・普及やプライマリ・ケア機能(≒かかりつけ医機能)の強化に関するエビデンスを今後もさらに構築していく予定だ、と研究グループは述べている。

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