調剤の外部委託をめぐっては、厚生労働省ワーキンググループが当面の間は一包化、同一の三次医療圏内を対象とする方針を示し、入江徹美氏(熊本大学大学院生命科学研究部)を代表者とする研究班が具体化の研究に取り組んでいる。2023年3月に調剤外部委託のガイドライン暫定版を策定し、全国6地域の薬局で調剤外部委託のシミュレーションを実施した結果をもとに、ガイドライン最終版の策定作業を進めている。
一包化した医薬品を受託薬局から患者宅に直送する場合、委託薬局側で遠隔鑑査を行う必要がある。シミュレーションに参加した寺脇大氏(てらわき薬局城西)は「静止画や動画を用いての検品は現実的ではなかった。実際にやってみたが大変難しいことが分かった」と語った。
川口向司氏(クリオネ北21条薬局)も「委託薬局側として分包薬の画像データを確認しても、薬袋に入れ間違っていないかなど、事前の確認がなかなか難しかった。確認作業やデータを渡すなどの作業が多く、時間的効率化のメリットが少ないと考えた」と振り返った。
委受託の費用も課題になった。杉本修康氏(わかば)は、「暫定ガイドラインで求められている受託薬局のハードルがかなり高く、甚大なコストが予想される医薬品トレーサビリティの担保やISO90001等の適合、様々な開示事項、細かい監査・検品方法、品質マネジメントシステムの構築などでコストが高くなる」と言及。
「委託薬局が高額な費用を支払ってでも一包化を外部委託してくれるのか疑問が残る」と課題を投げかけた。
暫定ガイドラインでは、調剤の責任は委託薬局の薬剤師にあるとされている。廣田憲威氏(大阪ファルマプラン)は「受託薬局から直送する場合、本当に委託薬局が全責任を負うことができるのか、大いに不安がある。共同責任を負う形でなければできないのではないか」と指摘した。
一方、一包化に必要な細かい指示のデータを委託薬局から受託薬局へ送信する仕組みの整備は進んでいるようだ。酒井哲嗣氏(日本薬科機器協会)は、国家戦略特区での調剤外部委託を提案している薬局DX推進コンソーシアムにおいて「標準データを構築している。仕様書という形でアウトプットが近々出てくる予定。受託薬局の分包機がどのメーカーのものであっても、オーダできるようになることを目標としている」と語った。