β2-m吸着カラムはβ2-m値低下に加え関節症状も改善、共吸着されるタンパク質が関与?
新潟大学は2月29日、透析アミロイドーシスの治療で使用する血液浄化器の性能を調査し、病気の進展に関連するタンパク質を発見したと発表した。この研究は、同大医歯学総合病院 血液浄化療法部の山本卓病院教授、同大大学院医歯学総合研究科 腎・膠原病内科学分野の成田一衛教授、同大同研究科 生体液バイオマーカーセンターの山本格名誉教授、大阪大学大学院 工学研究科の山口圭一特任准教授(常勤)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Amyloid:Journal of Protein Folding Disorders」に掲載されている。
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慢性腎臓病患者には血液透析をはじめとする腎代替療法が必要となる。血液透析患者は、長期間の治療で骨関節症状などのさまざまな合併症により、生活活動度が低下する。透析アミロイドーシスは長期透析患者に発症する疾患で、手根管症候群や脊椎症など骨関節症状を呈する。透析患者で増加するβ2-ミクログロブリン(β2-m)が蓄積することでアミロイド線維を形成し組織に沈着するが、その発症メカニズムは十分解明されていない。
透析アミロイドーシスの治療には、β2-mを効率的に除去する血液浄化器(β2-m吸着カラム)が使用される。β2-m吸着カラムは血中β2-m値が低下するだけでなく、骨関節症状を改善することから、β2-m以外のタンパク質を吸着している可能性が議論されていた。しかし、これまで吸着されるタンパク質の種類とそれらのアミロイドーシスへの関連は明らかにされていなかった。そこで研究グループは今回、β2-m吸着カラムに吸着されたタンパク質を網羅的に解析し、アミロイド形成に関連する分子を調査した。
アミロイド組織に含まれ、β2-m吸着カラムで高度に吸着されるタンパク質4種を同定
研究では、透析アミロイドーシスを発症している血液透析患者14人にβ2-m吸着カラムを使用し、使用後のカラムから吸着したタンパク質を取り出し、質量分析で吸着タンパク質を網羅的に解析した。その結果、β2-mを含め200種類のタンパク質が検出された。
その中で、アミロイド組織に含まれ、かつβ2-m吸着カラムにより高度に吸着されるタンパク質4種(リゾチーム・アンギオジェニン・マトリックスGlaタンパク質・補体因子D)が同定された。β2-mを試験管内で反応させると重合の結果、アミロイド線維が形成されるが、それらのタンパク質はその反応に作用した。
同定した4つのタンパク質の一部は病態に関与する可能性
今回の研究成果により、β2-m吸着カラムがβ2-m以外の多彩なタンパク質を吸着除去することが明らかにされ、その一部は透析アミロイドーシスの病態に関与する可能性が示された。今後、透析アミロイドーシスの症例に対し、β2-m吸着カラムのより積極的な臨床使用が望まれる。
「透析アミロイドーシスに関連するタンパク質に治療介入することで、予防・進展抑制に応用できる可能性がある。今後は、リゾチーム・アンギオジェニン・マトリックスGlaタンパク質、あるいは補体因子Dと透析アミロイドーシス発症の関連を大規模な臨床研究で解明する必要がある」と、研究グループは述べている。
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