どれくらいの量から開始すれば安全か、具体的なデータ不足
国立成育医療研究センターは2月28日、食物アレルギーと診断された乳児における鶏卵・牛乳・小麦のアレルギー症状の誘発用量を明らかにしたと発表した。この研究は、同センターアレルギーセンターの髙田数馬氏、福家辰樹氏、山本貴和子氏、大矢幸弘氏らの研究グループによるもの。研究成果は、ヨーロッパ臨床免疫アレルギー学会(EAACI)が発行する国際的な学術誌「Allergy」に掲載されている。
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世界各国から報告されている複数の大規模臨床試験のメタ解析などから、鶏卵など食物アレルギーの原因となりやすい食品であっても、乳児期早期に少量でも摂取を開始しておくことで、食物アレルギー発症の可能性が低くなることが明らかとなっている。近年、国や地域によっては、食物アレルギーの発症予防を狙い、原因となりやすい食物を含んだ乳児用製品が販売されているが、実際にどれくらいの量から開始すれば安全なのか、具体的なデータは不足している。そこで、どのくらいであれば安全に摂取できるのかという具体的な量と、安全性を評価するために研究を行った。
食物アレルギーと診断された乳児および2~15歳の子どもを対象に調査
同センターで、鶏卵(固ゆで卵白)、牛乳、小麦(うどん)のそれぞれの食物経口負荷試験で、食物アレルギーと診断された12か月以下の乳児と、2~15歳の子どもを調査対象とした。食物別では、鶏卵897人、牛乳646人、小麦343人 で、このうち12か月以下の乳児は、鶏卵197人、牛乳109人、小麦91人だった。それぞれの食物経口負荷試験のデータを解析し、全体の5%の人にのみ症状が現れる「アレルギー症状の誘発用量=ED(eliciting dose)05」を導き出した。さらに、乳児と2〜15歳の子どものそれぞれのED05を比較した。
乳児ED05は鶏卵28.6mg、牛乳6.1mg、小麦27.7mg
その結果、乳児における鶏卵のED05は28.6mg (ゆで卵白に換算すると約0.25g)、牛乳のED05は6.1mg (牛乳に換算すると約0.18mL)、小麦のED05は27.7mg(ゆでうどんに換算すると約1.1g)とわかった。また、特に乳児期では月齢が進むにつれED05が低くなる傾向を示し、アレルゲンとなりやすい食品を離乳期に開始するにあたっては、遅くなればなるほど安全域が低くなる可能性が示された。
乳児期における症状誘発リスクに特化した初めての報告
これまでED05を含めたアレルギー症状の誘発リスクの推定は、「小児」「成人」「年齢不詳」を含む不均一な集団における研究結果からの報告のみで、年代で分けて比較検討した研究はなく、乳児期における症状誘発リスクに特化した初めての報告となる。また、研究グループは、発症が疑われる子どもを持つ保護者に対し留意する点についても言及。「解析対象は食物アレルギーと診断された乳児。自己判断で開始せず、必ず医師の管理の下で行うこと」と注意喚起している。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース