茨城県は1日、2025年度入学生から地域枠を設置する予定の順天堂大学薬学部に「茨城県地域枠」の設置が決まったと発表した。25年度入学生2人が対象で、茨城県地域枠を設ける大学薬学部は初めて。県が24年度から薬学部の地域枠入学生を対象に実施する「薬学生修学資金貸与事業」の一環で、4月に薬学部を開学する順大と協力し、入学生には県が修学資金を貸与する。地域枠の創設により、県内の病院薬剤師の確保を図る方針である。
茨城県の薬剤師偏在指標は0.90、病院薬剤師は0.67と、薬剤師が充足していることを示す1を下回っており、36年度の将来指標でも病院薬剤師は0.68と大幅に不足する見通しが示されている。
こうした状況を受け、県は2月29日から始まった県議会で、地域医療薬剤師修学資金貸与条例案を上程。県内の病院で薬剤師が不足している状況を踏まえ、薬剤師不足地域内の病院で将来、薬剤師として働く人に修学資金を貸与することにより、地域医療の充実に必要な薬剤師の養成・確保が図れるとし、条例制定を目指している。
同条例が県議会で可決、制定されれば、病院薬剤師確保に向け、学生と貸与契約を締結する修学資金貸与制度を創設する方向だ。
修学資金の貸与は、地域枠入学者を対象としており、県が関係者と協議を進めてきたところ、4月に開学する順大薬学部が25年度から設置する地域枠の中に「茨城県地域枠」を創設することでまとまった。県が25年度入学生2人に対し、修学資金の貸与を行う。
19日に県と順大が茨城県庁で調印式を行う。大井川和彦知事は「県として地域枠制度をはじめとした各種施策により、地域医療の充実に必要な病院薬剤師の確保に、全力で取り組んでいく」との声明を発表した。
一方、順大は25年度薬学部入試から薬学部がない県を対象に地域枠を創設する計画を打ち出していた。亀井淳三特任教授は、本紙に「地域枠として薬学部・薬科大学が設置されていない県に声をかけていたが、茨城県が今回初めて、県として制度化、予算化の対応を取っていただいた。順大として地域枠の創設は地域貢献が狙いで、薬剤師の地域偏在の解消に少しでも貢献できれば」とコメントしている。