ヨウ素摂取量多い地域の患者185人対象に後ろ向き研究、前処置の必要性は?
名古屋大学は2月26日、バセドウ病に対して131I放射性ヨウ素内用療法施行時のヨウ素制限があまり重要でない可能性があることを新たに発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の加藤克彦教授、田村美香博士後期課程学生ら、北光記念病院放射線科の研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging」オンライン版に掲載されている。
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バセドウ病は、甲状腺機能亢進症を起こす代表的な病気で、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが多くなりすぎることにより、体重減少や脈が速くなる頻脈など全身にさまざまな症状が現れる。その治療の一つである131I放射性ヨウ素内用療法では、放射性ヨウ素を効率よく甲状腺に取り込ませるため、治療の前にヨウ素摂取の制限を行う。治療に使われる131I放射性ヨウ素は、放射性でないヨウ素と同様の機序で甲状腺に取り込まれる。そこで放射線(べータ線)が作用して甲状腺の細胞を壊し、甲状腺ホルモンの量を減らす。
今回の研究では、ヨウ素摂取量が多い地域の愛知県と北海道におけるバセドウ病患者185人を対象に、後ろ向き研究を行った。抗甲状腺薬またはヨウ化カリウムによる前治療に基づき4つのグループに分類(愛知県の抗甲状腺剤だけを投与されたグループ、愛知県の抗甲状腺剤とヨウ化カリウムを投与されたグループ、北海道の抗甲状腺剤だけを投与されたグループ、北海道の抗甲状腺剤とヨウ化カリウムを投与されたグループ)。131I放射性ヨウ素内用療法前のヨウ素制限の期間、24時間ヨウ素摂取率、尿中ヨウ素濃度と131I放射性ヨウ素内用療法の成功率の関連を調べた。
ヨウ素制限で尿中ヨウ素濃度減を達成も、治療時の尿中ヨウ素濃度と成功率の関連なし
研究の結果、ヨウ素制限により、尿中ヨウ素濃度の十分な減少が達成されたが、治療時の尿中ヨウ素濃度と成功率の関連はなかった。
同研究成果により、バセドウ病に対して131I放射性ヨウ素内用療法を施行する場合、治療前のヨウ素制限ではあまり厳格な制限は必要でない可能性があることが示唆された。
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