大腸カプセル内視鏡におけるFICE観察は、病変検出能を向上させるのか?
藤田医科大学は2月14日、画像強調システム・FICEを用いた大腸カプセル内視鏡読影は大腸がんの初期病変を効率的に拾い上げることができることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大岡崎医療センター消化器内科 大森崇史講師と同大医学部先端光学診療学 大宮直木教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Gastrointestinal Endoscopy」に掲載されている。
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海外では、2006年に第1世代の大腸用カプセル内視鏡「Colon Capsule Endoscopy(以下、CCE)」が臨床応用され、さらに2009年には第2世代のCCEが登場した。日本においては2014年1月に世界に先駆けて保険適用となり、大腸がんスクリーニング検査の新たなモダリティーとして期待されている。第2世代のCCEは第1世代から改良され、カプセルの前後にビデオカメラが搭載されている。加えて、フレームレート調節機能(Adaptive Frame Rate:以下、AFR)が搭載されることで、カプセルが速く進むときには前後のカメラ合わせて4枚/秒~35枚/秒の頻度で撮影可能となった。これにより、第1世代で危惧された病変の見落としのリスクを大幅に軽減することが可能となった。その一方で、前後にカメラが搭載されていることから1症例につき2度の読影が必要となり、また、AFRにより1症例あたりの撮影枚数が大幅に増加する結果となった。CCEのターゲットは主に大腸腫瘍性病変(大腸がんや腺腫・鋸歯状腺腫といった前がん病変)であることから、その診断精度は担保されなければならない。膨大な撮影枚数から的確に病変を拾い上げる必要があり、CCEにおける病変検出能を向上させる読影方法を確立させることが課題だった。
大腸カプセル内視鏡の読影ソフト「RAPID(R)ソフトウェア(Covidien Ltd, Medtronic plc)」には、白色光画像から病変部の分光学的情報を抽出し、微細な色の変化を強調するFICE機能が搭載されている。既報では、小腸カプセル内視鏡におけるFICE観察は通常光観察と比較し、血管拡張、びらん・潰瘍、腫瘍などの小腸病変の視認性を向上させたと報告されていた。一方で、大腸カプセル内視鏡におけるFICE観察の有用性、特に大腸腫瘍性病変に対する病変検出能に与える影響はこれまで検討されていなかった。
これらのことから、研究グループは今回、大腸カプセル内視鏡におけるFICE観察が病変検出能を向上させるのか、通常光観察との前向き比較試験を行った。
10mm未満・表面型の病変、管状腺腫や鋸歯状腺腫/過形成ポリープを従来法より多く検出
研究では、2020年4月までにCCE施行後4か月以内に大腸内視鏡を施行した91例のうち、多発ポリープ例2例を除く89例(男/女=65例/24例、年齢中央値66歳)を対象とした。1例につき通常光単独読影(CCE-WL)およびFICE単独読影(CCE-FICE)をそれぞれ2人の読影者が独立して行い、大腸内視鏡所見をゴールドスタンダードとして、CCE-WLとCCE-FICEにおける病変検出能を患者ごと・病変ごとに比較した。また、両読影法の2検者間一致率(k値)を検討した。
患者ごとの検討では、6mm以上の病変を有する患者の検出感度はCCE-WLで78%、CCE-FICEで93%であり、CCE-FICEの方が有意に高いという結果だった(P=0.0159)。また病変別では、10mm未満の病変や表面型の病変、管状腺腫や鋸歯状腺腫/過形成ポリープといった病変において、CCE-FICEの方がCCE-WLと比較し、有意に検出感度が高いという結果だった。また、全病変における検者間一致率(k値)は、CCE-WLで0.66,CCE-FICEで0.64であり、同等だったとしている。
大腸カプセル内視鏡でのFICEスクリーニング読影で、より良い大腸がん検診実現の可能性
大腸カプセル内視鏡は、大腸がんの1次検診(便潜血)と2次検診(大腸内視鏡)をつなぐ1.5次検診の新たなモダリティーとして注目されている。
「大腸カプセル内視鏡における膨大な撮影枚数から的確に病変を拾い上げるという課題は、このFICE観察を用いることで解決できる可能性がある。特に、腫瘍径が小さな表面型腺腫や鋸歯状腺腫などの大腸がんの初期病変を効率的に検出できることから、大腸カプセル内視鏡におけるFICEスクリーニング読影を行うことで、より良い大腸がん検診を実現することができると考える」と、研究グループは述べている。
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・藤田医科大学 プレスリリース