がん細胞を特異的に攻撃する抗体医薬「CasMab」、HER2を標的に
東北大学は2月9日、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)を標的とするHER2-CasMabを作製したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科分子薬理学分野の加藤幸成教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Molecular Sciences」に掲載されている。
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研究グループは、2014年に初めて、がん細胞を特異的に攻撃する抗体医薬「CasMab」の開発に成功した。これまで、複数の膜タンパク質に対するCasMabの報告を行い、企業導出にも成功している。
現在、HER2に対する抗体医薬として、トラスツズマブ(ハーセプチン(R))が世界中で使われており、乳がんや胃がんの患者で高い効果を示している。ただし、トラスツズマブは正常細胞に対して高い反応性を示すため、特に心臓に対する副作用が報告されてきた。そこで、HER2に対するCasMabの開発が臨床現場で求められている。
HER2-CasMab、トラスツズマブと同等の抗腫瘍効果/正常細胞に反応なし
今回の研究では新たに、HER2を標的とするHER2-CasMab(H2Mab250/H2CasMab-2)を作製した。今回開発したHER2-CasMabは、がん細胞に対して高い反応が見られるだけでなく、正常の上皮細胞には全く反応しなかった。
一方、これまでの報告の通り、トラスツズマブは正常の上皮細胞に高い反応性を示した。さらに、HER2-CasMabは乳がんに対し、トラスツズマブと同等の抗腫瘍効果を示した。これらの結果から、HER2-CasMabを抗体薬物複合体(ADC)やキメラ抗原受容体(CAR)T細胞に応用することにより、副作用のない治療法の開発につながる可能性が期待される。
米国でP1試験の患者登録を開始
なお、米国Fate Therapeutics社は、1月8日に、HER2-CasMab遺伝子を導入した多重遺伝子編集CART細胞製品候補FT825/ONO-8250の第1相臨床試験において、患者登録を開始したと発表している。
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