この日の検討会で厚労省は、海外で臨床開発が先行している医薬品について、日本人対象の追加試験を実施することで患者のアクセスが遅れる事態を避けるため、日本人患者における臨床試験成績がなくても薬事承認申請を行うことが適切な要件を示した。
具体的には、▽海外で既に主な評価の対象となる臨床試験が完了している▽極めて患者数が少ないなどにより日本の承認申請までに国内で追加臨床試験の実施が困難▽得られている有効性・安全性に関する情報等から総合的に日本人におけるベネフィットがリスクを上回ると見込まれる――の3要件に全て該当する場合は適切とした。
臨床試験実施の困難さについては、必ずしも患者数のみで判断されるものではなく、疾患等に基づいて総合的に判断すべきとした。
日本人の臨床試験結果の提出を承認後に求める場合は、原則として条件付き承認制度を活用する。厚労省は、「条件として課したものがデータとして出てきた時に、そのデータを踏まえて承認の維持や見直しについて科学的・合理的に判断する」との考えを示した。
一方、承認審査では、日本が参加した国際共同治験または国内試験の結果に基づき、国内の医療環境における日本人の有効性等を評価することが基本とも明記。日本人患者の臨床試験成績がなく承認申請する場合でも、承認申請と並行して治験を開始し、投与実績に関する情報を可能な限り収集して審査で確認すると共に、医療現場に情報提供することも重要とした。
条件付き承認制度の活用に対して、柏谷祐司構成員(日本製薬工業協会薬事委員会委員長)は、「追加の安全性監視活動でデータを取得するなど様々な方策がある中で、以前からある条件付き承認制度をプッシュすることは疑問」と問題視した。
一方、成川衛構成員(北里大学薬学部教授)は、「探索的試験の結果に基づいて承認したものの中で、不安がある場合はきちんと承認条件を付けて市販後に検討することが必要。有効性がクリアに示されなくても必ずしも承認を取り消す必要もないので、個別のケースに応じた判断が求められる」と述べ、肯定的な考えを示した。