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血液透析のかゆみ、分子群ウレミックトキシンと関連-新潟大

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2024年02月13日 AM09:20

血液透析患者に高頻度で発症のかゆみ、原因は不明点が多い

新潟大学は2月7日、血液透析患者のかゆみの実態とそれに関連する因子について調査した結果、血液透析患者ではかゆみの合併が多く、タンパク質結合性の高いウレミックトキシン(protein-bound uremic toxins:PBUT)と関連することが明らかになったと発表した。この研究は、同大本学医歯学総合病院血液浄化療法部の山本卓病院教授、同大病院高度医療開発センターの北村信隆特任教授、同大病院臨床研究推進センターの田中崇裕助教、同大大学院医歯学総合研究科腎・膠原病内科学分野の成田一衛教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Kidney Journal」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

進行した慢性腎臓病患者には、血液透析をはじめとする腎代替療法が必要となる。血液透析患者は、さまざまな症状を伴い、生活の質や活動度が保たれていない場合が多い。かゆみは、血液透析患者に高頻度に発症する症状の一つだ。その原因は不明な点が多いが、2000年に新潟県で行われた調査では、73%の血液透析患者にかゆみが認められ、それはβ2-ミクログロブリン、カルシウム、リン、あるいは副甲状腺ホルモンの血中濃度高値と関連した。その後、血液透析療法と薬物治療の改良により、血液透析患者のかゆみの重症度と関連する因子が変化している可能性があることがわかった。

腎臓病に伴う全身疾患・予後と関連の分子群PBUTに着目、かゆみの関連因子を調査

PBUTは腎臓病で血中濃度が増加し、腎臓病に伴う全身疾患や予後と関連する分子群。PBUTは、分子量の大きさとタンパク質結合性の強さで分類される。最近の透析療法の進歩により、タンパク質結合性の小さく分子量が小さいPBUTは効率的に除去できるようになった。しかし、インドキシル硫酸をはじめとするタンパク質結合性の高いPBUTは、血液中でアルブミンをはじめとする大きい分子と結合しているため、透析療法で除去されにくく、血液透析患者のさまざまな病態に関連すると報告されている。しかし、これまで透析患者のかゆみとPBUTの関連については報告がなかった。

そこで、今回の研究では、血液透析患者のかゆみの詳細と、それに関連する因子(特に、PBUTに着目)について調査した。新潟県透析施設の血液透析患者135人を調査(2017~2018年)。かゆみの程度を総合的に評価できる5D-itch scaleという方法で、血液透析患者のかゆみの程度を評価した。

腎臓病で体内増加のタンパク質との結合性から「PBUTスコア」作成、スコアとかゆみが関連

研究の結果、38%の患者がかゆみを有し、背中をはじめ全身に分布していた。腎臓病で体内に増加するタンパク質結合性の高いPBUT(インドキシル硫酸、p-クレシル硫酸、インドール酢酸、フェニル硫酸、馬尿酸)を主成分分析により、PBUTスコアを作成。その結果、かゆみを有する患者群の方が、かゆみのない患者群と比較して高値であり、かゆみと関連があることが示された。一方で過去に関連が示された、β2-ミクログロブリン、カルシウム、リン、そして副甲状腺ホルモンとかゆみの関連はなかった。以上から、血液透析患者のかゆみに、PBUTが関連することが示された。過去の報告と比較して頻度が減少したことは、カルシウム、リンなどの治療の進歩によるかもしれないとしている。

今後、縦断研究でPBUTとかゆみの変化を観察へ

同研究により、かゆみは血液透析患者にとって、いまだに重要な症状であることがわかった。また、かゆみはPBUTスコアと関連することが示された。PBUTを総合的に除去するような治療が、血液透析患者のかゆみを改善するかもしれず、治療法の開発が望まれる。また、PBUTスコアはPBUTの状態を総合的に評価することができ、透析に関連する他の疾患にも応用できる可能性がある。なお、研究は横断研究であり、今後は縦断研究を行いPBUTとかゆみの変化を観察する必要がある、と研究グループは述べている。

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