厚労省は、国内のGMP査察能力を向上させるため、PMDAで調査員の教育訓練や都道府県による査察への同行による知識共有等を行うと共に、PMDA調査員・外部専門人材の確保を行うGMP管理体制強化等事業を実施している。
来年度は予算案で6900万円を計上し、都道府県と全国のGMP調査で判明した不備事項を収集・分析する体制を構築する。そこで得た情報を活用し、都道府県のGMP調査水準の向上と均てん化を図ると共に、製薬業界に対しても実践的な啓発活動を行い、製品品質確保やGMP適合性遵守に関するコンプライアンスを向上させるのが狙いだ。
2020年12月に後発品メーカーの製造不正が発覚して以降、現在も欠品や出荷調整が続き、昨年12月には製薬企業に対する行政処分が相次いだ。
問題の背景には、企業における製造・品質管理への意識低下に加え、発見が困難な法令違反に十分に対応できていない薬事監視の実態もある。PMDAは、高リスクであるバイオ医薬品やワクチンなどのGMP調査を担う一方で、都道府県は後発品の調査を実施している。
ただ、都道府県間で対象施設数やGMP調査員数に大きな差があり、その経験や人数に乏しい都道府県の調査能力の維持・向上が課題となっている。
今回の事業では、調査経験が少ない都道府県が、十分な査察体制を持つ都道府県が行う調査手法を参考にできるよう役立てたい考え。医薬局監視指導・麻薬対策課の佐藤大作課長は、「後発品の注射剤製造施設がその県で初めて稼働した場合に、他県が行っている調査を参考にできるのではないか。後発初収載品のGMP調査も大事で、都道府県もレベルアップをしていかなければならない」と話す。
その上で、「GMP調査を拡充することは、企業側にも緊張感を持ってもらう上でも必要なことだと思っている。日本全国で質が高い査察体制を作ることは国民の医薬品に対する信頼を作っていくことにもつながる」と意欲を示している。