X染色体潜性遺伝性疾患「メンケス病」、通常女性は保因者で発症せず
自治医科大学は2月5日、メンケス病女児の家系を3世代にわたり解析し、その発症機序を解析したと発表した。この研究は、同大分子病態治療研究センター人類遺伝学研究部の松本歩講師、松村貴由教授、岩本禎彦前教授、放射線医学講座の森墾教授、小児科学の小坂仁教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific reports」に掲載されている。
X染色体潜性遺伝性疾患の1つであるメンケス病は、銅輸送ATPaseの1つATP7A遺伝子の異常により、腸管での銅輸送障害が生じ、重度の中枢神経障害などが出現する疾患。通常、X染色体の不活化は、通常ランダムに父親からと母親からのX染色体が不活化され、保因者女性は発症を免れる。
不活化が片方のX染色体に偏る家系、正常遺伝子含む染色体が不活化で女児発症
今回の研究では、メンケス病を発症した女児の家系について3世代にわたりX染色体の不活化率の偏り、RNAシークエンシング(遺伝子発現量の網羅的解析)、全ゲノムシークエンシング(遺伝配列の網羅的解析)を行った。
その結果、この家系ではX染色体不活化が片方のX染色体に極端に偏った状態が3世代にわたり確認され、祖母と母については疾患原因遺伝子を含む染色体の方が優先的に不活化されていたために発症を免れていた。一方、患児では正常遺伝子を含む染色体の方が優先的に不活化されていたため、メンケス病を発症したことがわかった。
今後、症例の蓄積でX染色体の不活化偏り機序の解明に期待
今回の研究では、さらに母親から患児への遺伝の際にX染色体の組み換えがどの部位で起こったのかを明らかにし、なぜこのような現象が起きたかについての考察を加えた。以前にも、X染色体の不活化の偏りの向きが親子や兄弟で逆になる症例の報告はあったが、X染色体組み換えの位置を同定して機序を検討した報告は今回が初。
今後、症例の蓄積により、X染色体の不活化の偏りの機序が明らかになって行くことが期待される、と研究グループは述べている。
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・自治医科大学 プレスリリース