ギリアド・サイエンシズ日本法人は1月30日、全身療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳癌の治療薬として、抗体薬物複合体(ADC)のサシツズマブゴビテカン(海外製品名「トロデルヴィ」)を日本で承認申請した。トリプルネガティブ乳癌は難治癌で、海外第III相試験では、全生存期間(OS、中央値)は化学療法群より5.4カ月長い12.1カ月という結果が出ている。
同社は今年から抗癌剤について日本での毎年承認を目指す方針で、ケネット・ブライスティング日本法人社長は昨年7月の会見で、抗癌剤の連続上市により「オンコロジー領域で強固なプレゼンスを確立する」と強調し、2030年には「オンコロジー領域におけるトップ10の地位を確立したい」と表明していた。
同剤は、腫瘍の増殖・転移に関与する細胞表面抗原Trop-2を標的としたADC。今回の承認申請は、二つ以上の化学療法レジメンによる前治療後に再発した切除不能な局所進行または転移・再発トリプルネガティブ乳癌を対象に行った海外第III相試験(ASCENT)、国内第II相試験(ASCENTJ-02)の結果に基づいて行われた。
海外試験のASCENTでは、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を医師が選択した化学療法(TPC)群と比べ有意な改善を示した。PFS(中央値)はTPC群より3.9カ月長い5.6カ月、同様にOS(同)では5.4カ月長い12.1カ月という結果を示した。
トリプルネガティブ乳癌は最も悪性度が高く、乳癌全体の約10%を占める。ホルモン療法、HER2標的抗癌剤も適応とならないため、治療選択肢が限られ、再発や転移の可能性も高いと言われる。転移再発までの平均期間が一般的に5年であるのに対し、トリプルネガティブタイプの場合は約2.6年、5年生存率は12%だという。