妊娠前BMIが25未満の318人を対象に調査
国立成育医療研究センターは1月26日、母子健康手帳情報を用いたコホート研究により、妊娠中に過剰な体重増加があった女性は、将来の糖尿病、高血圧、肥満のリスクが高くなっていることがわかったと発表した。この研究は、同センター周産期・母性診療センター産科の小川浩平診療部長、上原有貴医師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
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妊娠中に過剰な体重増加があると、妊娠中の合併症として妊娠糖尿病や妊娠高血圧のリスクが高くなることが、過去の多くの研究で実証されている。さらに、妊娠中に体重増加が多かった女性では産後の長期肥満につながりやすいことが指摘されてきた。しかし、妊娠中の体重増加と将来の慢性疾患の発症との関連を調べた研究はこれまでなかった。そこで今回、母子健康手帳に記載されているデータを利用して、妊娠中の体重増加と将来の慢性疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満)との関連を調査した。
2017年4月~2020年11月の期間に同センターへ通院していた妊婦の母親のうち、妊娠前のBMIが25kg/m2未満であった318人を研究対象とした。妊婦自身が産まれたときの母子健康手帳を持参してもらい、母親の体重増加データを収集。そして母親には現在の慢性疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満)を質問紙により回答してもらった。
糖尿病・高血圧・肥満のリスク増が判明、糖尿病は肥満にならなくてもリスク上昇
その結果、妊娠中の過剰な体重増加があった女性(妊娠前のBMIが18.5kg/m2未満の場合は15kg以上、18.5以上25kg/m2未満の場合は13kg以上)は、適切な体重増加だった女性と比べて将来慢性疾患を発症する調整オッズ比が糖尿病で約1.4、高血圧で約1.5、肥満で約1.8となることがわかった。また、高血圧のリスクが上昇することは、肥満になりやすいことが主な要因であったと考えられたが、糖尿病については肥満にならなかった女性でもリスクが上昇することも明らかになった。
体重が過剰に増加した女性では高血圧や糖尿病について健康管理が重要
これらの結果から、体重が過剰に増えてしまった女性では、将来の高血圧や糖尿病について、定期的な健康診断の受診などの健康チェックが重要であると考えられる。また、妊娠中に適切な体重増加を心がけて過剰な体重増加を避けることによって、妊娠糖尿病や妊娠高血圧などの妊娠合併症だけでなく、将来の糖尿病や高血圧などの慢性疾患のリスクを低減できる可能性が示唆された。
「妊娠中の適切な体重増加は健康に赤ちゃんを出産するために大切なことであるが、妊婦自身の将来の慢性疾患の指標になりうることがわかった。ただし、過度な体重制限や低栄養は将来の胎児の健康に悪影響となることも知られている。また、妊娠前のBMIや合併疾患によって適切な体重増加の目安も人それぞれ異なる。妊娠中の体重管理については自己判断をせずに、担当医の指導を仰いでほしい」と、研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース