妊娠高血圧症候群を考慮し、分娩回数と高血圧の関連を検証した初の疫学研究
東北大学は1月26日、東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査に参加の成人女性を対象とした分析により、閉経前では、分娩回数と高血圧に関連がない一方で、閉経後では分娩回数が多い女性ほど高血圧のリスクが高いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科女性ヘルスケア医科学共同研究講座の岩間憲之講師と同大大学院医学系研究科周産期医学分野の齋藤昌利教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Hypertension」に掲載されている。
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世界で25歳以上の成人の約30%が高血圧を有しており、60歳以上の日本人女性の約60%が高血圧を有している。女性特有の因子として、分娩というライフイベントや、妊娠高血圧症候群がある。妊娠中に妊娠高血圧症候群を発症した女性は、将来の高血圧のリスクが高いことが知られている。しかし、分娩自体による高血圧のリスクについては一定の見解はなく、分娩回数と高血圧の関連についても、その研究結果は一致していなかった。また、高血圧のリスク因子である妊娠高血圧症候群を考慮し、分娩回数と高血圧との関連を検証した日本の疫学研究はなかった。
20~75歳女性3万530人対象、閉経前後で分娩回数と高血圧の関連を分析
研究グループは、東北大学東北メディカル・メガバンク機構が実施した地域住民コホート調査のベースライン調査に参加した20~75歳の女性3万530人を研究対象として横断研究を実施し、閉経前後に別けて分娩回数と高血圧との関連を分析した。
閉経後に分娩回数と高血圧リスクが正の相関
研究の結果、閉経前は分娩回数が増えても高血圧のリスクとの関連は見られなかった。一方で、閉経後は、分娩回数が1回の女性と比較して、分娩回数が2回、3回、4回以上の女性は、高血圧のリスクがそれぞれ1.058倍、1.091倍、1.125倍高いことを明らかにした。
また、閉経後では分娩回数が多いほど、高血圧の危険因子である肥満の割合が高い傾向を認めた。そこで、現在のBMIで調整することで、BMIによる影響をできるだけ取り除くと、閉経後の分娩回数と高血圧の関連性は薄れた。したがって、分娩回数が多いほど高血圧のリスクが高くなる理由として、肥満の関与が考えられ、高血圧予防のためには適切な体重維持が重要なことがわかった。
閉経前後とも妊娠高血圧症候群の既往が高血圧リスク
その他、閉経前後ともに、妊娠高血圧症候群の既往は、高血圧の危険因子だった。
同研究結果は、妊娠高血圧症候群の既往も考慮した上で、分娩回数と高血圧有病率との関連を調査した日本初の報告だ。多産女性や妊娠高血圧症候群既往歴を有する女性を対象とした、高血圧のサーベランスや予防対策の必要性が示唆される、と研究グループは述べている。
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