ビデオゲームの音は難聴リスクを高める
ビデオゲーム(テレビゲーム)の大音量は、ゲーマーに不可逆的な難聴や耳鳴りをもたらす可能性のあることが、新たな研究で示唆された。この研究では、ソファーに座っているか、ゲームセンターにいるかなどにかかわりなく、ビデオゲームの音量がしばしば人の聴覚にとって安全とされるレベルを超えていることが示されたという。米サウスカロライナ医科大学のLauren Dillard氏らによるこの研究結果は、「BMJ Public Health」に1月16日掲載された。
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Dillard氏らは、論文データベースや灰色文献を検索して、基準を満たした世界9カ国(米国、ドイツ、イタリア、ポーランド、日本、中国、インドネシア、韓国、オーストラリア)で実施された14件の研究を抽出(コホート研究11件、非コホート研究3件、対象者の総計約5万4,000人)。これらの研究結果を統合して、ビデオゲームの音量と難聴や耳鳴りのリスクとの関連を検討した。
11件のコホート研究のうちの6件は、聴覚とコンピューターゲームやビデオゲームとの関連を検討し、4件はアジアに多いゲームセンターやパソコンルームでのゲームに、残りの1件はモバイルデバイスでのゲームに焦点を当てて聴覚との関連を探っていた。これらの研究で報告されたゲームの音量は、モバイルデバイスでの43.2dBからゲームセンターでの80dB超〜90dB未満に及び、音への曝露時間は平均3時間/週と推測された。また、1秒未満の短い衝撃音は、ビデオゲームのバックグラウンドサウンドよりも最大で15dB以上高く、1件の研究では119dBにまで達することが報告されていた。これは、衝撃音に対して子どもで許容されるレベル(約100dB、大人では130〜140dB)を大きく上回っている。
ゲーム機に取り付けられたヘッドホンを通じて5種類のビデオゲームの音量を測定した研究では、4種類のシューティングゲームでの音量がそれぞれ平均88.5dB、87.6dB、85.6dB、91.2dB、レーシングゲームでは85.6dBであることが報告されていた。これらの数値は、子どもと大人で許容される騒音レベル(子ども:75dBを週40時間、大人:80dBを週40時間)に近いものであった。
ビデオゲームをプレイしている人の割合を報告していた6件の研究に基づくと、その割合には20〜78%の幅があった。2件の韓国の研究では、ゲームセンター利用者の割合は60%程度に上ることが報告されていた。また、ゲームのプレイと自己報告による難聴や最小可聴限界、耳鳴りとの関連を検討した5件の研究のうちの2件では、生徒のゲームセンターの利用が両耳の重度の耳鳴りと高周波難聴のリスク増加と関連することが明らかにされていた。別の大規模観察研究では、ビデオゲームの使用と自己報告による難聴の重症度との関連が報告されており、さらに、別の1件の研究では、1000万人以上の米国人がビデオゲームやコンピューターゲームから発せられる「大きな」または「非常に大きな」音にさらされている可能性が報告されていた。
こうしたレビュー結果から研究グループは、「ゲーマーの中でも、特に、この論文で示された平均レベル以上の音量で高頻度にゲームをプレイする人は、おそらく許容される騒音レベルの限度を上回っていることが予想される」と話す。そして、そのようなゲーマーでは、「安全ではない音量に日常的にさらされることで、不可逆性の難聴や耳鳴りを発症するリスクが増加している可能性がある」と警鐘を鳴らしている。
ただし研究グループは、この問題に関する研究は数が限られていることを指摘している。例えば、過去10年間で、ビデオゲームやゲームセンターでの平均的な騒音レベルを客観的に測定した研究はたった2件しかないのだという。このことを踏まえた上で研究グループは、「ビデオゲームによる聴覚への脅威を十分に評価するために、さらなる研究を行う必要がある」と話している。
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