マッコウクジラ由来の高級香料・漢方薬、主成分アンブレインの生成機構は?
新潟大学は1月25日、龍涎香の主成分アンブレインにビタミンD受容体結合能があることを解明し、アンブレインよりも受容体親和性が高い化合物を酵素合成することに成功したと発表した。この研究は、同大自然科学系(農学部)生物有機化学分野の佐藤努教授、上田大次郎助教、同大大学院医歯学総合研究科/歯学部歯科薬理学分野の柿原嘉人助教、富山県立大学の安田佳織准教授、磯貝泰弘教授、大阪公立大学の品田哲郎教授、ベルリン自由大学のChristmann教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
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マッコウクジラ由来の高級香料・漢方薬・伝承医薬である龍涎香(りゅうぜんこう)はマッコウクジラから得られる腸管結石。紀元前より、高級な香水等として世界中で香料として利用されていたが、商業捕鯨禁止により、ほとんど入手不可能な「幻の香り」とも言われている。まれに、海岸等で打ち上げられた時には、高値で取引されることがニュースになる。また、龍涎香は漢方薬や伝承医薬にも用いられており、その生物活性にも興味が持たれている。現在、龍涎香やその主成分アンブレインの生成機構は不明であり、その生合成酵素・遺伝子を利用することも不可能だ。
このような背景から、研究グループは新しい酵素の「アンブレイン合成酵素」を人工的に創出し、生合成による供給経路の確立に着手するとともに、アンブレインの香気成分への化学変換、ならびに生物活性評価研究をあわせて展開してきた。
龍涎香の多様な生物活性の一部、ビタミンD受容体を介したものと示唆
龍涎香は万能薬としても利用されていたことから、多様な生物活性をもつことが考えられる。ビタミンDにも多様な生物活性が報告されており、サプリメントとして利用されるとともに、類縁体が皮膚疾患や骨疾患の治療薬として使用されている。
今回の研究では、アンブレインの化学構造がビタミンDと類似していることに着目。解析の結果、アンブレインにビタミンD受容体結合能があることが明らかになった。このことから、龍涎香の多様な生物活性の一部はビタミンD受容体を介したものであることが示唆された。
アンブレインの破骨細胞分化促進活性にはビタミンD受容体は非関与
また、ビタミンDとアンブレインは、共通して破骨細胞分化促進活性をもつことが報告されている。アンブレインの破骨細胞分化促進活性にビタミンD受容体が関与しているかどうかを評価するため、アンブレイン合成酵素の中間体や副生成物を用いて構造活性相関を解析した。その結果、同活性はビタミンD受容体を介していないことが示唆された。したがって、龍涎香の生物活性の作用点は多様であることも明らかになった。
アンブレインより高いビタミンD受容体親和性の化合物6種見出す
さらに、アンブレイン合成酵素の変異体を用いることで、アンブレイン以外の多様な新しい類似化合物を酵素合成し、ビタミンD受容体親和性を解析。その結果、アンブレインよりも親和性が高いものを6種類見出すことに成功した。
龍涎香の生物活性、薬剤利用への新たな道として期待
同研究基盤は、龍涎香を薬剤等として利用するための新たな道を拓く成果だという。加えて、天然を凌ぐ生物活性を持つ薬剤の創出にもつながるものであり、現在、さらなる成果創出に向けた産学連携・異分野融合の共同研究を進めている、と研究グループは述べている。
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・新潟大学 プレスリリース