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脳梗塞急性期に対する「同種細胞治療」の有効性・安全性を公表-北大病院

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2024年01月23日 AM09:20

発症後18~36時間以内の脳梗塞に対するマルチステムの有効/安全性を検証する臨床試験

北海道大学病院は1月17日、脳梗塞急性期に対する同種異系細胞治療の有効性評価試験の結果を発表した。この研究は、同病院脳神経外科の長内俊也講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Neurology」にオンライン公開されている。

脳卒中は世界第2位の死因で障害の主な原因でもあり、2019年には660万人が脳卒中により死亡するとされている。脳梗塞の治療には静脈内血栓溶解療法や機械的血栓除去術などのエビデンスに基づく再灌流療法が広く用いられている。これらの治療成績はさまざまであるにもかかわらず、脳卒中後3か月経過しても約50%の患者に障害が残るといわれており、新たな治療選択肢について注目が集まっている。

多くの治療の中で幹細胞治療は特に期待されており、間葉系幹細胞、骨髄単核細胞、神経幹細胞、および人工多能性幹細胞など、さまざまな細胞の脳梗塞に対する治療効果の検討が行われている。大量生産された幹細胞製品であるMultiStem()は、炎症抑制、免疫異常の調節、損傷細胞の保護、血管新生促進、組織修復、治癒促進など、さまざまなメカニズムを通じて効果をもたらすと考えられている。

今回研究グループは、脳梗塞発症後18~36時間以内の患者に対するマルチステムの安全性と有効性を検討した第2/3相無作為化臨床試験「TREASURE(Treatment Evaluation of Acute Stroke Using Regenerative Cells)試験」の結果を報告した。

有効性主要評価項目は、90日目に転帰が極めて良好だった患者の割合

研究では、20歳以上で初回スクリーニング時にNIHSSスコア 8~20に相当する神経障害が持続しており、DW-MRIで大脳皮質を含み、長軸が2cm以上の急性期脳梗塞が確認されている、脳卒中発症前にmodified Rankin Scale(mRS)が0または1である患者を対象に、マルチステム群とプラセボ群に1:1の割合で無作為に割り付けし二重盲検化した。その後、患者に対してマルチステム・プラセボのいずれかを30~60分かけて、脳卒中発症後18~36時間の間に1回静脈内に点滴投与した。

有効性の主要評価項目は、90日目に転帰が極めて良好(エクセレントアウトカム)だった患者の割合。エクセレントアウトカムはmRS≦1(範囲:0~6)、NIHSSスコア≦1(範囲:0~42)、Barthel index(BI)≧95(範囲:0~100)の複合スコア基準を満たす状態と定義した。

安全性の主要評価項目は、被験製品との因果関係が否定できない点滴後24時間以内に発現した心血管系および呼吸器系の機能異常または重度のアレルギー反応、投与後7日以内に発現した重篤な有害事象、治験薬投与7日後までの評価でベースラインに対してNIHSSスコアが4点以上上昇したと定義される神経症状の悪化、並びに90日目までの死亡または生命を脅かす有害事象、および90日目までの二次感染だった。

高齢患者多い206例にマルチステムまたはプラセボを静脈内投与

2017年11月15日~2021年3月30日の間に229人の患者を募集し、2022年3月29日の365日まで追跡調査を行った。そのうち207例(マルチステム群105例、プラセボ群102例)が無作為化された。その後、206例(マルチステム群104例、プラセボ群102例)にマルチステムまたはプラセボを静脈内投与した。

同試験では高齢患者の割合が高く、マルチステム群とプラセボ群の年齢中央値はそれぞれ79歳と78歳だった。再灌流療法を受けた患者の割合、NIHSSの平均値、梗塞体積は両群間で同様だった。

マルチステム群、虚血コア体積が50mL以上の患者と64歳以下の患者で転帰良好

有効性の主要評価項目は、マルチステム群とプラセボ群の間で有意差はなかった(12例[11.5%]対10例[9.8%]、P=0.90、マルチステム群とプラセボ群の補正後リスク差、0.5%[95%CI, -7.3% to 8.3%])。90日目におけるmRS≦2の探索的サブ解析が年齢と虚血コア体積のサブグループに対して行われた。

虚血コア体積が50mL以上の患者では、マルチステム群で有意に転帰が良好だった(8/27例 [29.6%] vs 3/37例 [8.1%]、P = 0.04、マルチステム群とプラセボ群の補正後リスク差、20.4%[95%CI、1.0%~39.9%])。また、64歳以下の患者もマルチステム群で有意ではなかったものの、転帰が良好な傾向を認めた(8/10 [80.0%] vs 5/12 [41.7%]; P = 0.08、マルチステム群とプラセボ群の補正後リスク差、37.2% [95% CI, -0.4% to 74.8%])。

グレード3・4のアレルギー反応なし、マルチステムのさらなる効果検証に期待

また、グレード3または4のアレルギー反応を含む主要安全性評価項目に群間差はなかったとしている。今回の研究結果により、虚血性脳卒中発症後18~36時間以内の同種細胞治療の静脈内投与は安全だが、短期転帰を改善しないことが判明した。

「探索的解析の結果については今後の追加検討が必要であると考えられる。本研究の結果と現在欧米で進行中のPhase3研究との併合解析により、マルチステムのさらなる効果の検証が期待される」と、研究グループは述べている。

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