抗菌薬の代替治療法の一つとして注目されるファージ療法
大阪公立大学は1月18日、尋常性ざ瘡(ニキビ)患者を対象としたバクテリオファージ療法に関する臨床試験を開始することを発表した。この研究は、同大大学院医学研究科皮膚病態学の鶴田大輔教授、立石千晴准教授、ゲノム免疫学の植松智教授、藤本康介准教授らの研究グループによるもの。試験の詳細はjRCT(jRCTs051230164)に記載されている。
薬剤耐性菌による死亡者数は2050年には世界で1000万人を超えると推定されており、国際的な医療問題となっている。新規の抗菌薬開発は非常に困難を極めており、代替治療法の創出が急務となっている。このような状況を踏まえて、抗菌薬とは異なる機序の治療法の開発が世界中で進んでおり、バクテリオファージを用いた治療法(ファージ療法)が代替治療法の一つとして注目されている。バクテリオファージは、細菌(バクテリア)に感染するウイルスの総称であり、略して「ファージ」とも呼ばれる。特定の細菌に感染するウイルスであるファージを用いて、細菌が原因となる病気を治療する手法のことをファージ療法と呼ぶ。抗菌薬に薬剤耐性をもっている細菌に対しても耐性菌を壊すことができる可能性が期待されている。しかし、日本国内ではヒトに対するファージ療法の実用化は全く進んでいない。
耐性菌を生じることもある尋常性ざ瘡(ニキビ)を対象に、安全性・効果を評価
今回研究グループは、化粧品として日本国内でも販売されているロシアのミクロミル社製造のファージ製剤(日本名称:イスクラファージスキンバランス、ロシア名称:ファゴデルム)を用いて、皮膚の慢性炎症性疾患の一つであり耐性菌も生じることのある尋常性ざ瘡(ニキビ)患者を対象に、安全性および効果の評価を目的とする臨床研究を行う。
尋常性ざ瘡は、皮膚の慢性炎症性疾患の一つである。皮脂の分泌が多いことや毛穴の先が詰まることで、毛穴の中に皮脂がたまり、炎症が始まる。この皮脂のたまりには、アクネ菌が増えやすい状態になっている。アクネ菌はどんな毛穴にもいる常在菌であるが、数が増えると赤いぶつぶつしたニキビや膿がたまったニキビの状態になる。
研究グループは、「治療の切り札としてのファージ療法の国内実用化を目指した大変重要な臨床研究になる。研究グループ一丸となり、研究を進めていきたい」と述べている。
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・大阪公立大学 プレスリリース