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潰瘍性大腸炎の便意切迫感、酸素飽和度イメージング内視鏡による評価に成功-筑波大

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2024年01月17日 AM09:10

潰瘍性大腸炎の「」を客観的に評価する方法は存在しない

筑波大学は1月12日、酸素飽和度イメージング内視鏡検査によって計測した大腸粘膜の酸素飽和度が、)の症状の一つである便意切迫感および大腸炎の重症度を客観的に評価する新たな指標として有用であることを見出したと発表した。この研究は、同大医学医療系の秋山慎太郎講師と土屋輝一郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Gastrointestinal Endoscopy」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

UCの患者は下痢、血便、そして便意切迫感に悩まされている。治療では、それらの臨床症状をとることが初期の目標であり、最終的には大腸内視鏡検査を実施し、大腸粘膜の炎症が十分にとれている状態(粘膜治癒)がゴールとなる。また、大腸内視鏡検査の際、生検によって採取した粘膜を顕微鏡で観察し、炎症の改善状況を評価することも、粘膜治癒の程度を理解する判断材料になる。

しかし、便意切迫感については生活の質が低下する患者が多いにも関わらず、その症状を客観的に評価する方法が存在しない。また、大腸内視鏡検査では大腸炎の重症度をスコアで評価するが、医師間のばらつきがあり、病状の客観的評価が難しくなることも課題と考えられている。

UC患者100例に内視鏡検査を実施、便意切迫感が強いほど大腸粘膜の酸素飽和度「低」

研究グループは今回、UCの炎症した大腸粘膜に生じる低酸素に着目した。炎症粘膜では炎症細胞が大量の酸素を消費し、異常な血管の発達により粘膜への血流が低下するため、低酸素状態となる。これまでに、内視鏡用プローブで測定した大腸粘膜の酸素飽和度(StO2)とUCの重症度との間に関連があることが報告されているが、測定にあたってプローブを大腸粘膜に接触させる必要があり、その接触点しかStO2が測定されないため、リアルタイムの情報を得ることが技術的に困難だった。一方、酸素飽和度イメージング内視鏡は、StO2に関する空間的・時間的情報を得ることができるレーザー内視鏡であり、リアルタイムの白色光内視鏡画像とStO2イメージを同時に提供することが可能だ。

そこで、通常診療の際にUC患者100例に酸素飽和度イメージング内視鏡検査を実施して490枚の静止画像を取得し、大腸の各部位(右側結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸)における腸粘膜のStO2を計測した。その結果、臨床症状、特に便意切迫感が強いほど直腸粘膜のStO2が低くなることを発見した。また、内視鏡や顕微鏡で評価した大腸炎の重症度が高いほど、大腸粘膜のStO2が低くなることを見出した。

UCの便意切迫感と重症度を、内視鏡のモード変更だけで評価可能

便意切迫感は、下痢や血便とは異なり、直腸の炎症だけでなく、その機能低下などを含む多くの病因が関与するため、これまで客観的に評価する方法がなかった。同研究により、酸素飽和度イメージング内視鏡がUC患者の便意切迫感を客観的に評価し得る新しい手法になると期待される。

また、同評価法は内視鏡の観察モードをStO2イメージに変更するだけで実施可能であり、UC診療を専門としない消化器内科医でも容易にUCの重症度を客観的に評価できることから、評価者に依存しない、より均質な結果を取得できると考えられる。

「StO2正常化」という新たな治療目標の確立に期待

なお、同成果は「酸素飽和度イメージング内視鏡を用いた潰瘍性大腸炎活動性評価」として、特許出願済みだという。研究グループは今後、同一のUC患者で「炎症の程度に応じてどのように腸粘膜のStO2が変化するのか」について解析していく予定だとしている。

血液検査や超音波検査など既存のUC評価法も参考にしながら、炎症の改善に伴いStO2が正常化するのかを明らかにすることで、「StO2正常化」という新しい治療目標を確立することができると考えられる。そのような客観的な治療目標の設定が、UC患者の診療の向上や生活の質の改善につながると期待される、と研究グループは述べている。

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