厚生労働省の「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」は12日、新薬の製造販売後の使用成績調査をめぐって議論した。日本製薬工業協会の構成員は、副作用報告制度が定着し、通常の安全性監視活動で使用成績調査を実施する必要性が少なくなっていると指摘。別の構成員からも、施設選定や症例選定の実態、倫理に関する規定が不十分などとして、「役割や意義は相対的にかなり低下した」と見直しを求める声が上がった。
2022年度に実施された製造販売後調査103件のうち43件を使用成績調査が占めるが、再審査のために本来は必要のない調査が課されており、海外では日本ほど多く活用されていないのが現状。製薬企業や医療機関の負担も大きい。
この日の会合で柏谷裕司構成員(製薬協薬事委員会委員長)は、使用成績調査について、欧米では検討課題が明確となっている一方、日本では情報収集が主体となっており、追加の安全性監視活動を行う安全性検討事項も多いと指摘。
そのため、短期間で発現する安全性検討事項に対しては、新薬の販売開始後6カ月間行われる市販直後調査で情報収集し、追加の安全監視活動は長期間の観察を通じて初めて評価できるリスク・ベネフィットバランスに影響する重要なリスクが存在する場合に実施するよう提案した。
成川衛構成員(北里大学薬学部教授)は「調査方法自体に大きな変化はなく、役割や意義は相対的にかなり低下した」と指摘。具体的課題として、「施設選定や施設内での症例選定がバイアスなしで行われているかは疑わしいし、調査のための処方が行われていることも聞いている」と理由を列挙し、製造販売後調査の信頼性基準を求めるGPSP省令についても「倫理に関する医療機関の審査、患者からの同意手続きに関する規定が一切ない。せめて臨床研究の倫理指針に対応した規定は入れてほしい」と訴えた。
一方、小川千登世構成員(国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科長)は、「負荷があっても小児に関するデータは入れるべき」と主張。抗癌剤の再審査報告書を引き合いに、「小児の投与例があるにも関わらず、ワードを検索しても一文字も出てこない。『特別な背景のある患者等』という項目を新設して評価し、結果を記載してほしい」と求めた。