頸椎症性脊髄症の初発症状「手足のしびれ」、術後に残る場合が多い
大阪公立大学は1月12日、頸椎症性脊髄症で手術を受けた患者187例の術後症状について調査した結果を発表した。この研究は、同大学院医学研究科整形外科学の玉井孝司病院講師の研究グループによるもの。研究成果は、「Spine」にオンライン掲載されている。
頸椎症性脊髄症は、重篤な麻痺・身体機能障害を残す脊髄損傷の最大の原因と言われている。手術治療を要する頸椎症性脊髄症患者は10万人あたり5人程度とされているが、MRI画像診断によると頸髄の圧迫を有する手術治療予備軍は、60歳以上の38%に上るとされている。頸椎症性脊髄症の初発症状は手足のしびれであり、徐々に進行すると手足の使いにくさ(運動症状)が出現する。一般的に、運動症状が出れば脊椎外科による手術加療が適応となり、手術による運動症状の改善が期待できる。一方で、手足のしびれに関しては、手術で治る可能性は低く、手術後もしびれが残る場合が多いことがわかっている。
術後の患者187例対象調査、全体の45%に手足の強いしびれ
研究グループは今回、頸椎症性脊髄症に対して手術加療を受けた患者187例から術後症状を時間経過とともに観察し状態の変化を調べた。その結果、患者86人(全体の45%)に「手足の強いしびれ(自己採点による100点満点中40点以上のしびれ)」が遺残していることが判明した。
術後の治療満足度調査、手足のしびれ遺残「強」ほど満足度「低」
また、「術後の治療満足度」を調査した結果、運動症状が改善しているかどうかは関係なく、手足のしびれが強く残っている人ほど「術後の治療満足度」が低いことがわかった。これにより、手足のしびれ遺残が治療満足度に影響する因子であることが明らかになった。さらに、手足のしびれ遺残を予測する因子は、手術前疼痛の有無(疼痛がある方がしびれが残りやすい)であることもわかった。
「術前疼痛あり」でしびれが残りやすい
頸椎症性脊髄症の治療において、医師が治したい異常(運動症状)、と患者が治して欲しい異常(運動症状のみではなく、しびれも)に乖離があることが判明した。しびれの原因は多岐にわたり、多くの状態において有効な治療方法が確立されていないことと、しびれは視覚的・他覚的に検知が出来ず、客観的な評価が困難であるという理由で、しびれの訴えは治療において重要視されにくい傾向がある傾向がある。さらに、今回の研究では、手術前に疼痛を訴えている患者にしびれが残りやすいことも明らかになったことから、今後は「遺残するしびれ」に対する治療戦略を構築し、患者に寄り添った医療提供を目指した研究の進展が望まれる、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・大阪公立大学 プレスリリース