偏食など食行動に問題が見られるASD児、2019年に食行動質問紙「ASD-MB」開発
大阪公立大学は1月11日、食行動質問紙「ASD-MBQ」の予測妥当性および適切な支援開始時期の目安となる基準値を検討するため、3~6歳の子どもの保護者向けに検証した結果を発表した。この研究は、同大大学院リハビリテーション学研究科の中岡和代講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Research in Autism Spectrum Disorders」にオンライン掲載されている。
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自閉スペクトラム症の子どもでは、偏食など食行動に問題が見られることが国内外で報告されている。自閉スペクトラム症の子どもたちの食行動評価として、2008年にアメリカで開発された「Brief Autism Mealtime Behavior Inventory(BAMBI)」があり、低年齢(2~11歳)かつ知的障害や自閉症度の面で重度な子どもが対象だ。研究グループは2019年に、年齢を3~18歳とし、知的障害や自閉症度が軽度から重度の子どもを対象とした食行動質問紙「ASD-MBQ(Autism Spectrum Disorder Mealtime Behavior Questionnaire)」を開発した。
対象年齢のうち3~6歳で、ASDと定型発達児との判別ができるか検証
ASD-MBQの質問項目にある「偏食がある」「手づかみ食べをする」「食事に集中できない」などの行動は、幼児期の子どもたちの多くに見られる行動だ。そこで今回の研究では、対象年齢のうち幼児期(3~6歳)に着目し、ASD-MBQが自閉スペクトラム症と定型発達児(非自閉スペクトラム症児)を判別できるかを検証した。また、総得点だけでなく、質問項目を類似性によって分類した「偏食」「不器用・マナー」「食への関心・集中」「口腔機能」「過食」の5つのカテゴリーにおいて、支援を開始する目安となる基準値を検討した。
今回の研究では、3~6歳の子ども256人(ASD群128人、非ASD群128人)を対象に、ASDMBQ得点について、Mann-Whitney U検定を用いて2群比較した。
有意に判別可能と判明、総得点・カテゴリー別得点から支援開始時期目安の基準値を決定
研究の結果、平均総得点およびカテゴリーごとの得点においてASD群、非ASD群の間でそれぞれ有意差が見られ、ASD-MBQの有用性が実証された。
ROC分析(Receiver Operating Characteristic Analysis)を用いた分析により、総得点およびカテゴリーごとに基準値を検討。その結果、支援開始時期の目安となる基準値として、5点中総得点では2.04点、「偏食」では1.59点、「不器用・マナー」では1.86点、「食への関心・集中」では2.06点、「口腔機能」では1.63点、「過食」では1.90点を決定した。
多くの保護者が幼児期の子どもの食行動について悩みを抱えていることが報告されており、専門家への相談のタイミングの目安となる基準値がわかると、早期発見・早期支援につながるだけでなく、子どもたちや保護者、学校の先生の生活にも良い面で影響があると考えられる。研究グループは現在、専門家がどのような支援を提供すれば良いか、その方法や有効性についても研究している、と述べている。
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