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「この痛みは他人のせい」、誤認の過程を実験心理学的手法で明らかに-畿央大

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2024年01月05日 AM09:20

痛みというネガティブな出来事を適切に原因帰属させるには?

畿央大学は12月21日、自分が引き起こした行為や運動に伴って痛みが誘発されたにも関わらず、その痛みは自分のせいで起こったのではないと認識してしまう、その認知過程を、実験心理学的手法を用いて明らかにしたと発表した。この研究は、同大ニューロリハビリテーション研究センターの林田一輝客員研究員、森岡周教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Consciousness and Cognition」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ある出来事について、それを生み出していると考えられる何らかの原因に結び付ける心理過程を原因帰属と呼ぶ。しばしば臨床では、「この痛みは私のせいで起こったんじゃない」「あの先生のせいでこの痛みがあるんだ」など、自分が引き起こした行為や運動に伴って痛みが誘発されたにも関わらず、その痛みは自分のせいで起こったのではないと原因帰属してしまうことがある。このような患者は、他人に原因帰属をしてしまうため、患者教育が難渋する場合がある。痛みというネガティブな出来事を適切に原因帰属させることは、行動変容を促すために重要であるが、原因帰属は主観的な要素が多く科学的に扱うことが難しいため、その認知的メカニズムは不明だった。

原因帰属を客観的に測定できるtemporal binding課題を用いて実験

研究グループは、原因帰属を客観的に測定できるtemporal bindingという現象に着目し、行為を自分の意志で選択した場合(自由選択条件)と、他者に強制された場合(強制選択条件)とで原因帰属が変化するのかどうかを、健常者を対象に実験的に調査した。

具体的には、単純な意思決定課題と痛み刺激を組み合わせた修正版temporal binding課題を用いた。Temporal binding課題は、認知的な原因帰属を暗黙的かつ定量的に評価できる方法として知られている。あるキーを押して(行為を実行する)、100ms時間間隔を空けて、音が鳴る(出来事が起こる)という状況おいて、そのキー押しと音の間の時間間隔を参加者に推定させる課題だ。推定した時間間隔が短いほど、行為と出来事の強い結びつけを認知しており、原因帰属を定量化できるとされている。

実験参加者は、自由選択条件と強制選択条件を遂行した。画面上の3つのキーのうち、1つは音だけが出る確率が最も高いキー、もう1つのキーは音と触覚刺激が出る確率が最も高いキー、3つ目のキーは音と痛み刺激が出る確率が最も高いキーであることが参加者に伝えられていた。自由選択条件では、痛み刺激を避けるようにキーを選択して押すように参加者に伝えられ、強制選択条件では、強制的に選択された黒塗りのキーを押すように指示された。しかし実際には、各キーはそれぞれの刺激を与える確率が同じで、そのことを参加者には知らせていなかった。つまり、痛み刺激を受ける確率は、参加者がどのキーを押しても同じで、自由に選択できるかどうかの要因のみが操作された。

他者強制された時に痛みを伴うと「自分のせいではない」という認識が減少

その結果、行為に伴って痛みが与えられた時、自由選択条件と比較して強制選択条件で推定時間間隔が有意に長くなることが示された。つまり、他者強制された時に痛みを伴うと自分への原因帰属が減少していた。驚くべきことに、自由選択条件と強制選択条件では、痛みの程度は同等であるという結果も得られた。これらの結果から、他者のせいにするといった原因帰属は、ネガティブな出来事そのものよりも自分でその行為を選択したかどうかが重要であることが示された。この成果は、患者教育の際に患者の自由意志を確保する重要性を示している。

「研究によって、原因帰属は自由選択が重要な要因であることが示された。今後の研究では、痛みの原因帰属の根底にある認知過程が患者の行動を変化させるかどうかを調べる予定だ」と、研究グループは述べている。

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