リンパ節転移をより正確に予測できる新たな術前診断法が求められている
筑波大学は12月22日、CT画像から腫瘍の術前リンパ節転移を予測する人工知能(AI)技術を開発したと発表した。この研究は、同大医学医療系の顧文超研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「eClinicalMedicine」に掲載されている。
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非機能性膵神経内分泌腫瘍(NF-PanNETs)は多くの場合、偶然に発見されるまれな腫瘍だが、近年の医療画像診断技術の急速な進展に伴って検出率が増加している。治療の主要な選択肢は手術だが、特に腫瘍がリンパ節に転移した際の最適な摘出手順については、現在も議論が続いており、さらなる改善が必要とされている。また、リンパ節転移は重要な予後因子であるため、新たな術前診断手法の開発が求められている。
ラジオミクスとAIの深層学習を組み合わせた新しい術前診断のアプローチは、リンパ節転移の予測精度を高める可能性を秘めている。この方法により、リンパ節転移のより正確な事前診断を可能にし、外科医が適切な治療戦略を立てる際の重要な支援を提供できると考えられる。
構築したRDPモデル、高精度でのリンパ節転移予測に加えて無病生存期間も予測
研究グループはまず、2つの医療センター(中国の復旦大学上海がんセンターと北京大学がんセンター)で治療中の320例の膵神経内分泌腫瘍患者を包括的に分析。その中から11のラジオミクス特徴と9の深層学習特徴を抽出・選定し、これらに対して10種類の異なる機械学習方法を適用・評価した結果、アルゴリズムとして「glmBoost」を選択した。
これを用いて構築したRDPモデル(ラジオミクスと深層学習を統合したモデル)は、トレーニングコホートおよび内部検証コホートにおけるリンパ節転移の予測で、それぞれ89%と87%の精度を達成し、外部検証コホートでも91%の精度を示した。また、同モデルは術後患者の無病生存期間を高い精度(p <0.001)で予測できることが判明したという。
「非機能性膵神経内分泌腫瘍」におけるリンパ節転移の術前予測に有効
以上のことから、開発したRDPモデルは、非機能性膵神経内分泌腫瘍におけるリンパ節転移を術前に予測するのに有効と考えられる。特に、腫瘍リンパ節切除の2cmの閾値に関する現行の臨床ガイドラインに対する補完として機能し、より正確な治療戦略の策定につながると考えられる。
具体的には、2cm以下のNF-PanNETsでは、RDPモデルの分析能力を表すRDPスコアが低い場合はフォローアップや最小限の腫瘍核出術が適切であり、RDPスコアが高い場合には標準的な腫瘍切除が推奨される。一方、腫瘍が2cmを超える場合、低いRDPスコアは最小限の腫瘍核出術の適用を示唆し、高いRDPスコアは標準的な腫瘍切除の必要性を指摘している。
外科医が精度の高い手術方法や治療戦略を選択するための重要なツールになる可能性
今後、同モデルをより広範な患者データで検証し、その有効性を詳細に確認していく必要がある。「他の画像診断技術との統合で診断精度のさらなる向上を目指し、最終的には臨床試験を経て、このモデルを実用的なソフトウェアとして開発する計画だ。本モデルは、リンパ節転移の事前予測に役立ち、外科医がより精度の高い手術方法や治療戦略を選択するための重要なツールとなると考えられる」と、研究グループは述べている。
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・筑波大学 TSUKUBA JOURNAL