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B型肝炎、完治が期待できる抗ウイルス薬候補化合物を発見-慈恵大ほか

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2023年12月28日 AM09:00

核酸アナログ製剤によるB型肝炎治療、ウイルス抑制効果はあるがゲノム残存

東京慈恵会医科大学は12月22日、B型肝炎の完治が見込まれる新たな抗ウイルス薬の候補、iCDM-34を発見したと発表した。この研究は、同大臨床検査医学講座の古谷裕講師、永森收志教授、松浦知和客員教授、慶應義塾大学大学院理工学研究科の平野秀典特任准教授、理化学研究所環境資源科学研究センター生命分子解析ユニットの堂前直ユニットリーダー、生命機能科学研究センタータンパク質機能・構造研究チームの白水美香子チームリーダー、細胞機能変換技術研究チームの鈴木治和チームリーダー、京都大学大学院薬学研究科システムケモセラピー(制御分子学)分野の掛谷秀昭教授、明治薬科大学薬学部薬剤学研究室の小林カオル教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cell Death & Discovery」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

B型肝炎は世界中で2億9000万人の持続感染者がいるとWHOより報告されている。C型肝炎はほぼ100%完治する治療薬が開発されたが、B型肝炎は完治に至る治療薬は開発されておらず、完治を可能とする薬の開発が急がれている。

現在、B型肝炎の治療には、核酸アナログ製剤とインターフェロン()製剤が用いられており、核酸アナログ製剤はB型肝炎ウイルス(HBV)の複製を強力に抑制することができるが、HBVのゲノムとして働くcccDNAが患者の肝細胞に残り再発の可能性があるため、生涯服用する必要がある。また、IFN製剤は約30%の患者にしか効果がなく、IFNに対する自己抗体の産生により不活化される可能性があり、また、発熱などの副作用がある。

IFNα/β受容体2に結合し抗HBV活性示すiCDM-34、感染マウスで肝臓中HBV DNAを抑制

研究グループは、IFNの弱点を克服し、HBVの完治が望める治療薬の開発を行うため、IFNα/β受容体2のIFNαの結合部位に結合し抗HBV活性を発揮する低分子化合物をin silicoスクリーニングで同定した。

ドッキングシミュレーションによりIFNα/β受容体2のIFNα結合領域にあるポケット構造と約30万化合物との結合親和性を解析し、37化合物を同定した。この中でiCDM-34が抗HBV活性と抗HCV活性を示した。iCDM-34は単剤でHBV DNA、HBe抗原、HBs抗原を抑制し、核酸アナログ製剤であるエンテカビルとの併用によりさらにHBV DNAを抑制した。加えて、HBV感染ヒト肝細胞キメラマウスを用いた21日間連続投与実験で肝臓中のHBV DNAを抑制した。

iCDM-34は、IFNシグナルは活性化させずAh受容体と下流因子を誘導

iCDM-34の作用機構についてマイクロアレイを用いた遺伝子発現の網羅的解析を行った結果、IFNシグナルは活性化せず、(arylhydrocarbon receptor、芳香族炭化水素受容体)を活性化しCYP1A2などの下流因子の発現を誘導することが明らかとなった。Ah受容体をsiRNAを用いてノックダウンするとiCDM-34による抗HCV活性はなくなったことからiCDM-34はAh受容体のアゴニストとして働くことが示唆された。

Ah受容体活性化がCDK1/2によるSAMHD1リン酸化を抑制、dNTP減少で抗ウイルス活性発揮

この抗ウイルス活性を発揮するメカニズムを調べるためにAh受容体の下流で発現抑制されるCDK1/2の発現を比較すると、iCDM-34を処理した細胞ではCDK1/2の発現が抑制されていた。さらに、CDK1/2によりリン酸化されるSAMHD1のリン酸化も抑制されていた。これらのことからiCDM-34はAh受容体を活性化しCDK1/2の発現を抑制することによりSAMHD1のリン酸化を抑制し、SAMHD1によるdNTPからdNへの反応を促進し、ウイルスゲノムの合成を抑制するために抗ウイルス活性を発揮すると考えられた。

HIVなどさまざまなウイルスに対する抑制剤としても開発可能

今回同定されたiCDM-34はAhRのアゴニストとして働きSAMHD1のリン酸化を阻害することによりウイルスゲノム合成を抑制する新しいタイプの抗ウイルス剤である。

「iCDM-34はHBVとHCVだけでなく、HIVや新型コロナウイルスなどさまざまなウイルスに対する抑制剤として開発が可能で、今後の高活性化と体内動態の向上により新規抗ウイルス剤として実用化が期待される」と、研究グループは述べている。

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