筋トレが骨格筋に与える生物学的影響、その全貌は?
名古屋大学は12月15日、筋力トレーニングによる骨格筋老化抑制効果の分子メカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科総合保健学専攻の飯島弘貴客員研究者(前:高等研究院YLC特任助教、現:ハーバード大学医学部助教授)、糖鎖生命コア研究所数理解析部門の松井佑介准教授(医学系研究科総合保健学専攻准教授兼任)ら、米ハーバード大学医学部のファブリシアアンブローシオ准教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Physiology of Ageing Skeletal Muscle and the Protective Effects of Exercise」に掲載されている。
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これまで、筋力トレーニングが骨格筋に与える生物学的影響は幅広く解析されてきたが、特定の分子やシグナル経路に着目した研究報告が大半だった。そのため、全貌を明らかにするシステム俯瞰的な解析への要求が高まっていた。加齢により骨格筋に脂肪が蓄積すると、筋力が低下し、生活の質を低下させることが知られている。疫学調査により、筋力トレーニングが骨格筋の脂肪蓄積を抑制することがわかっているが、その分子メカニズムは明らかになっていなかった。
骨格筋脂肪減少効果に係る有力なシグナル経路を特定
今回、研究グループは独自のネットワーク医学解析を骨格筋の網羅的遺伝子発現データに適用することで、分子メカニズムを網羅的に探求した。はじめに、骨格筋の脂肪形成を担うとされる間葉系前駆細胞に着目。これらの細胞集団を脂肪細胞に分化させる遺伝子群を定義した。次に、高齢者における筋力トレーニングがこの遺伝子群の働き方に与える影響について、ネットワーク医学解析を用いて評価。これら一連の解析の結果、筋力トレーニングによる骨格筋の脂肪減少効果に係る有力なシグナル経路を特定した。
筋トレの健康増進効果再現の運動模倣薬の開発に期待
同研究成果によって、骨格筋の老化メカニズム解明が進むだけでなく、筋力トレーニングの健康増進効果を再現する運動模倣薬の開発が期待される、と研究グループは述べている。
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