■2府県からは業務改善命令
厚生労働省は22日、後発品メーカー最大手の沢井製薬が抗潰瘍薬「テプレノンカプセル50mg『サワイ』」について承認書に記載のない方法により不正に試験を行っていた問題で、同社に対し医薬品医療機器等法に基づき総括製造販売責任者の変更命令を出した。総責が不正行為に強く関与し、不正事案を検知できる体制を構築していなかったこと、同社が多品目の製品を供給している後発品大手であることなどを根拠に判断。初の適用となった。また、大阪府と福岡県は同日、それぞれ同社信頼性保証本部と同社九州工場に業務改善命令を出した。市場に違反品が流通していないとの判断で、業務停止は免れた。
同社は、テプレノンカプセルを製造する同社九州工場(福岡県飯塚市)で、安定性モニタリングの溶出性試験を不適切な方法で行っていた。総責は、不正行為が継続的に行われていたにも関わらず検知できる体制を構築せず、品質管理業務を適正に行わなかった。さらに、不正行為の報告を受けた後、同社九州工場に対して不正行為の事実関係の調査や原因究明を指示せず、薬機法に基づく業務を行わなかった。
また、不正行為の全容が明らかになっていない時点では当局への報告を行わないと判断した上で、製造販売業許可権者の大阪府、厚労省に不正行為を報告しなかった。
厚労省は、こうした薬機法違反行為があり、管理者として不適当と判断。国から総責の変更命令を初めて出すことになった。沢井は同日、総責を務めていた取締役専務執行役員信頼性保証本部長の寺島徹氏が2024年1月1日付で退任し、足立重久薬制部長が就任する人事を発表した。
一方、福岡県は、医薬品製造業者である同社九州工場に、また大阪府は製造販売業者である同社信頼性保証本部に業務改善命令を出した。
福岡県保険医療介護部薬務課は「厚労省と大阪府と齟齬がないよう協議して決定した。市場に違反品が確認されていないこと、沢井製薬の報告者や県の聞き取りの結果、組織的関与がなかったと結論付けられたため、この処分となった」とコメントした。1カ月以内をメドに改善計画書を提出してもらう考えだ。
大阪府は、6月に沢井から情報を内部告発で入手し、立ち入り調査を実施。その後、福岡県と厚労省に情報を共有した。本社への立ち入りはその後9月13日と20日にも実施し、調査結果を踏まえて信頼性保証本部に業務改善命令を出した。
厚労省医薬局監視指導・麻薬対策課の佐藤大作課長は、本紙に対し「総責変更命令は沢井製薬が果たしている多品目の製品を供給している責任から見ても、変更が相当であろうと判断した」と説明。
その上で、「業としての処分は福岡県と大阪府の処分が妥当と思うが、役員の変更がかけられることをこの会社が持っている社会的責任として、しっかり自覚して反省してほしい。社内体制を見直して信頼回復に努めていただきたい」と述べた。