肝線維化進行度を低侵襲・簡便にモニタリングできる信頼性の高い検査が求められていた
シスメックス株式会社は12月20日、慢性肝炎・肝硬変患者の診断・治療において、血液のみで肝臓の線維化の進行度を定量的に評価できる検査用試薬「HISCL(TM)M2BPGi(TM)-Qt試薬」(以下、同製品)について、同日より保険適用が開始されたと発表した。
慢性肝炎は、ウイルス性肝炎、過度のアルコール摂取、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)などを原因として、肝臓の細胞が破壊され慢性的に炎症を引き起こす状態を指す。継続的に肝臓が損傷を受けることで肝臓の線維化が起こり、その進行は肝硬変や肝細胞がんなど重篤な病態をもたらす可能性があるため、慢性肝炎に起因する疾病の診断や治療モニタリングにおいては、肝線維化の進行度を評価することが重要だ。一方、その診断には、入院が必要で侵襲性が高い肝生検(生体組織診断)が必要となっている。
また、近年は治療の進歩により経口薬でC型肝炎ウイルスを消失させることが可能になったが、ウイルス消失後でも肝細胞がんを発症する事例があることから、肝細胞がんを発症するリスクの高い人を見つけて早期に確定診断や治療につなげていくため、肝線維化の進行度を簡便にモニタリングできる低侵襲かつ信頼性の高い検査へのニーズが一層高まっている。
肝線維化の進行度の定量的評価を実現、慢性肝炎に起因する疾病の早期発見などに貢献
同社は2013年12月、肝臓の線維化ステージを反映するタンパク質の糖鎖構造を捉えることで、肝線維化の進行を血液のみで評価する検査用試薬「HISCL M2BPGi試薬」について、国内における製造販売承認を取得し、2015年1月に保険適用を受けた。免疫検査分野における同社独自の項目の一つであり、患者への負担が少ない画期的な検査として、多くの医療機関において慢性肝炎および肝硬変の診断・治療を支えてきた。
HISCL M2BPGi-Qt試薬は、2023年11月20日に体外診断用医薬品として国内での製造販売承認を取得し、12月20日より保険適用が開始された。同製品は、既存技術を進化させ、病態を識別するための測定結果を、カットオフインデックス(陰性(-)、陽性(1+)、陽性(2+)の3分類)からM2BPGiの濃度(AU/mL)に変更し、肝線維化の進行度の定量的評価を実現した。これにより、より精緻な検査結果に基づく肝臓の線維化進展の診断を支援し、慢性肝炎に起因する疾病の早期発見や経過観察、治療後のモニタリングに貢献する。
2024年2月の国内発売を目指す
さらに、同製品による定量値データを用いて、疾患ごとに肝臓の線維化ステージをより適切に評価するための基準値の研究や、肝細胞がんへの進行リスク判定における有用性の研究など、慢性肝炎の検査における新たな臨床価値創出への貢献も期待される。今後、まずは2024年2月の国内発売を目指して準備を進め、その後海外にも順次、導入を進めていく予定だとしている。
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・シスメックス株式会社 プレスリリース