心不全の予後と関連するフレイル、認知症などを含め包括的に評価する指標は未確立
順天堂大学は12月19日、高齢心不全患者におけるFrailty Index(フレイル インデックス)の包括的なフレイル指標としての有用性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科循環器内科学の藤本雄大大学院生、末永祐哉准教授、鍵山暢之准教授、前田大智非常勤助教、堂垂大志非常勤助教、砂山勉非常勤助教、南野徹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Canadian Journal of Cardiology」にオンライン掲載されている。
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心不全の患者数は年々増加の一途を辿り、世界的にも重要視されている。その心不全患者総数の増加は、国内においては高齢心不全患者の増加に起因すると言われている。高齢心不全患者においては、併存疾患としてフレイルが注目を集めており、フレイルを合併した心不全患者は予後が悪いことが知られている。一般的に想起されやすい身体的フレイル(歩行機能の低下など)だけでなく、社会的・認知的なフレイル(独居や認知症など)を含めた包括的なフレイル評価が重要とされているが、その包括的なフレイルを評価する最適な指標は確立されていないのが現状である。
国内15施設の65歳以上心不全患者データを解析、Frailty Indexの有用性を検討
研究グループは、高齢心不全患者において欠損累積モデルに基づくFrailty Indexにおける、包括的なフレイル指標としての有用性や予後予測能を検討することを目的とした。
この研究では、2016年から2018年の間に、国内15施設において、急性非代償性心不全で入院となり独歩退院可能となった、65歳以上の心不全患者を前向きに登録し、そのデータを統計的に解析した。
Frailty Index、身体/社会/認知的フレイルの合併や2年間の死亡率と関連
対象となった高齢心不全患者1,027人の平均年齢は81歳、男性が58%、Frailty Indexの中央値は0.44だった。Frailty Indexが高値であった患者は、高齢で男性が多く、併存疾患の合併を多く認め、さらに身体的・社会的・認知的フレイルの合併をそれぞれ多く認めた。2年間の追跡の間に、死亡は205人に発生した。単変量Coxモデル・多変量Coxモデルのいずれにおいても、Frailty Indexは有意に死亡と関連していた。また、心不全患者の死亡を予測する既存のリスクモデルにFrailty Indexを追加したところ、予後予測能の改善を認めた。このモデルは、表現型モデルで示されたフレイルの数を既存モデルに付加した場合と比較して、同等の予後予測能を有していた。
以上の結果より、Frailty Indexは単一指標でありながら、その値の高値が身体的・社会的・認知的フレイルの合併を反映しており、また既存のリスクモデルに対する付加的な予後予測能を有していたことがわかった。
フレイル合併高齢心不全患者の予後改善につながると期待
今回の研究では、Frailty Indexが包括的にフレイルを評価する指標として適切である可能性が示唆された。しかし、日常臨床においてすべての患者にFrailty Indexを用いた評価をすることは難しく、包括的なフレイルの評価指標のゴールデンスタンダードとなるためにはさらなる検討が必要だと考えられる。「本研究の結果より、フレイル合併の高齢心不全患者の予後改善を目的とした研究が進むことが期待される」と、研究グループは述べている。
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