■長期品「4分の1」で決着
診療報酬の本体部分はプラス0.88%だが、平均乖離率を踏まえて実施される通常の薬価改定で0.97%(国費1200億円程度)、材料価格改定で0.02%(国費20億円程度)引き下げるため、診療報酬全体では0.12%のマイナス改定となる。0.94%減となった前回改定からはマイナス幅が大幅に縮小した。
薬価0.97%引き下げの内訳を見ると、革新的医薬品の薬価維持や有用性系評価の充実などの対応、約2000品目を対象とした不採算品再算定の特例的対応に充てる。
今回は各医療職の賃上げにも対応した改定となった。実質0.46%増のうち、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する人の賃上げに資する措置分として0.28%が含まれ、その賃上げ分を除くとプラス0.18%となる。
病院薬剤師の賃上げにも対応し、コメディカルに対する賃上げの特例的対応として0.61%増分を充てる。24年度にベースアップ2.5%、25年度に2.0%を確実に実施できるよう各職種への配分方法を工夫する。今回の改定による医療従事者の賃上げの状況、食費を含む物価の動向、経営状況等について実態を把握する。
長期収載品の選定療養は来年10月に導入する。後発品の上市後5年以上経過したもの、または後発品の置き換え率50%以上になった長期収載品を対象に、後発品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象(患者負担は4分の1以下)とすることで決着した。
長期収載品の選定療養を導入した場合の財政効果は来年度に180億円、25年度に420億円程度を見込んでいる。
また、▽調剤基本料の適正化▽医療DX推進による医療情報の有効活用等――については、中央社会保険医療協議会での議論を踏まえ、改革を進めていく。
武見氏は大臣折衝後の記者会見で、医療・介護職種の賃上げに対応したトリプル改定について「大変厳しい交渉だったが、医療でプラス0.88%となった。関係職員の賃上げを実現できる水準を確保できたと考えており、賃上げや処遇改善につながる仕組みの構築に向けて関係審議会で具体的な議論を進めていきたい」と評価した。
長期収載品の選定療養導入については「これから考えていかなくてはならない課題。公的保険でできる限りカバーしつつ、患者自身で負担しながら新しい医薬品にアクセスするためのやり方をこれから考えていくことが必要になる。選定療養はそのごく一部であり、全体を見直す必要があることから導入を決めた」と説明した。