交通行動別人流と、生活習慣病関連の医療費の関係を分析
大阪公立大学は12月19日、新型コロナウイルス感染流行期間(コロナ禍)である2020年4月~2021年9月を調査対象に、都市圏においてコロナ禍での交通行動別人流と生活習慣病関連医療費の関係性を分析し、コロナ禍前の基準値(2020年1月13日)を100%とした場合、徒歩人流が70%を超えると、全ての都道府県において、生活習慣病関連医療費が減少していたことが明らかになったと発表した。この研究は、同大大学院生活科学研究科居住環境学分野の加登遼講師と瀧澤重志教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Transport & Health」に掲載されている。
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コロナ禍における人流抑制は、感染拡大防止や病床確保に効果があった一方で、さまざまな健康問題を引き起こしていたことが報告されている。特に生活習慣病は、コロナ禍以前から健康長寿の最大の阻害要因とされてきた。さらに、生活習慣病に関連した医療費は、国民医療費に大きな負担を与える社会問題となっている。
研究グループは今回、2020年4月~2021年9月の期間における交通行動別人流と、生活習慣病関連医療費の関係性をランダムフォレスト法により分析した。交通行動別人流は、スマートフォンから取得した位置情報ビッグデータを用い、生活習慣病関連医療費は、日本システム技術株式会社のJASTメディカルデータセットを用いた。対象とした生活習慣病は、糖尿病、高血圧性疾患、代謝異常症、脂質異常症、脂肪肝、動脈硬化症、脳内出血、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞だった。なお、同大大学院生活科学研究科と日本システム技術株式会社は、『「メディカルビッグデータを活用したヘルスケア分野における研究推進」に関する連携協定』を締結している。
都市圏では公共交通機関人流「増」でも、生活習慣病関連医療費「減」
研究対象期間、全ての都道府県において、生活習慣病関連医療費と強く関連する人流の種類は、徒歩人流だった。この徒歩人流に関して、コロナ禍前の基準値を100%とした場合、徒歩人流が70%を超えると、生活習慣病関連医療費が減少していたことが明らかになった。また、公共交通機関人流については、都市圏の都道府県においては、公共交通機関の人流が110%を超えると、生活習慣病関連医療費が徐々に減少していた。
都市圏以外では自動車人流「増」で、生活習慣病関連医療費「増」
さらに、自動車人流については、都市圏以外の都道府県では、公共交通機関人流より自動車人流の方が影響しており、自動車人流が80%から160%までの値において生活習慣病関連医療費が徐々に増加していた。
今後の感染症対策の基礎データの一部となることに期待
これらの結果は、都市圏とそれ以外の都道府県について、生活習慣病関連医療費を増加させないための交通行動別人流の目安を示すもの。パンデミック期間において、人流抑制以外の対策を講じることも一つの手であったことが示唆された。
「世界保健機関が、新型コロナウイルス感染症に関する「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言終了を発表した現在、新型コロナウイルス感染症流行時の感染症対策を検証する作業が進められている。特に、その検証作業においては、本学が強みとする「総合知」に基づく学際研究が求められる。研究成果が、今後の感染症対策の基礎データの一部となることを期待している」と、研究グループは述べている。
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