28種栄養素の習慣的摂取量の不足・過剰者割合を全国規模で調査
東京大学は12月19日、日本人対象の全国規模の食事記録調査より、28種類の栄養素の習慣的摂取量について、摂取量が不足や過剰である者の割合を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科栄養疫学・行動栄養学講座の篠崎奈々特任助教、同研究科社会予防疫学分野の村上健太郎教授、佐々木敏東京大学名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。
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食事改善のためには、栄養素の摂取量が適切であるかどうかを評価することが重要だ。食事摂取量は日々、あるいは季節によって大きく変動するため、栄養素摂取量を評価する際には、複数日の食事調査に基づく個々人の習慣的摂取量を用いる必要がある。例年、日本では国民健康・栄養調査が行われているが、この調査で得られるのは1日のみの世帯レベルでの食事データだ。他に小規模な研究がいくつかあるが、対象集団の特性や居住地、季節が限定されていたため、日本人の習慣的な栄養素摂取量はほとんど明らかになっていなかった。
そこで今回の研究は、日本人の習慣的な栄養素摂取量を算出し、摂取量が適切であるか評価することを目的とした。まず、32都道府県に住む1~79歳の4,450人を対象に、各季節に2日ずつ、合計8日間の秤量食事記録調査を実施。さらに、MSM(Multiple SourceMethod)という統計手法を用いて、28種類の栄養素について個々人の習慣的摂取量を算出した。それらの値を、日本人の食事摂取基準2020年版の各指標と比較して、各種栄養素の摂取量が不足あるいは過剰である者の割合を調べた。
カルシウム摂取不足者は全ての性・年齢層で多く、鉄摂取不足者は12~64歳女で多い
調査の結果、ほとんどの栄養素において習慣的摂取量が推定平均必要量を下回る者が一定割合いることがわかった。特に、カルシウムの摂取量が推定平均必要量を下回る者の割合は全ての性・年齢層で高く(29~88%)、鉄の摂取量は12~64歳の女性で不足している者の割合が高い(79~95%)ことがわかった。
全ての性・年齢層の20%以上で脂肪摂取量が多い
また、目標量については、タンパク質、食物繊維、カリウムで、習慣的摂取量が目標量の下限値を下回る者の割合が一定割合いることがわかった。さらに、全ての性・年齢層の20%以上で総脂肪と飽和脂肪酸の摂取量が目標量の上限値を超えており、88%以上でナトリウム(食塩)が目標量の上限値を超えていた。
栄養素摂取状況改善の公衆栄養政策決定で重要な資料として期待
今回の研究は、日本人の大規模集団において習慣的な栄養素摂取量を算出し、適切であるかどうかを評価した世界で初めての研究だという。同研究成果は、日本において栄養素摂取状況を改善するための公衆栄養政策を決定する上で重要な資料になると考えられる、と研究グループは述べている。
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