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脳梗塞に対する血管内治療、ASPECTS 3以下は費用対効果に優れない可能性-京大

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2023年12月19日 AM09:00

虚血領域が広い患者は治療後でも後遺症、費用対効果は?

京都大学は12月14日、脳卒中患者の転帰と費用を長期的に推定するモデルを作成し費用対効果分析をした結果、血管内治療の増分費用効果比は483万円と費用対効果に優れたが、この増分費用効果比は虚血領域の程度に大きな影響を受け、極めて大きな脳梗塞(ASPECTS 3点以下)では費用対効果に優れない可能性が示唆されたことを発表した。この研究は、同大医学研究科の今中雄一教授、愼重虎特定講師、江頭柊平専門職学位課程学生らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of NeuroInterventional Surgery」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

脳梗塞では血管内治療が有効で標準治療となっている。ただし、虚血領域が広い広範脳梗塞患者は神経症状が重症で予後不良のため、従来の血管内治療の有効性を示した臨床試験からは除外されており、血管内治療の適応がない状態が続いていた。近年、これらの広範脳梗塞患者にも血管内治療が3か月後の身体的機能を改善することがわかり、広範脳梗塞に対しても血管内治療の適応が拡大された。しかし、そもそも広範脳梗塞患者は治療したとしても後遺症が残る可能性が高く、血管内治療の費用も安くないものであることから、長期的に見た場合に血管内治療が患者にどのくらいの利益をもたらすのか、そしてそれが社会にどの程度の負担となるかはほとんどわかっていなかった。

血管内治療を受けた場合と受けなかった場合の累積の健康状態と費用の差を比較

研究グループは、患者が脳卒中を発症してから寿命を迎えるまでの人生を考えたときに、各時点での健康状態やかかる費用の累積を、現実に即した形で推定するモデルを作成した。健康状態は、生活の質を考慮した生存年数(質調整生存年数)で計測した。作成したモデルに基づき、血管内治療を受けた場合と受けなかった場合の累積の健康状態と費用の差を比較し、”1” 質調整生存年数を得るのに必要な追加費用が500万円/質調整生存年数を下回る場合には、費用対効果に優れると判定した。(500万という基準は、日本の費用対効果分析で一般に用いられるしきい値)。

ASPECTS 3以下では1質調整生存年数を得るのに必要な追加費用が1940万円

結果、広範脳梗塞に対する血管内治療は、累積追加費用が407万円、累積質調整生存年数の増分が0.84で、その比は483万円/質調整生存年数であり、費用対効果に優れることがわかった。一方、脳梗塞の大きさを示すASPECTSという虚血スコアを用いて分析したときに、ASPECTS 3以下という広範脳梗塞の中でも虚血領域が極めて大きい患者では、1質調整生存年数を得るのに必要な追加費用が1940万円と極めて大きくなり費用対効果に優れない可能性が示された。

より現実に即した医療価格調整に発展する可能性

今回の研究は、医療技術が長期的に社会に及ぼす影響を定量化しただけでなく、同一の医療技術の費用対効果が患者特性により大きく異なることを示した点で意義がある。また、広範脳梗塞の費用対効果分析自体は以前にも他国で行われたことがあったが、患者特性により費用対効果が大きく異なることを示した研究は今までほとんどなかった。日本では、費用対効果分析は一旦定まった医療技術の価格が、その有効性に見合ったものであるのかの調整に用いられることになっている。「今回の研究により得られた知見は、医療の質の担保と適正配置のための、より現実に即した医療価格調整に発展する可能性がある」と、研究グループは述べている。

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