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mRNAワクチン、接種後の十分な睡眠が効果を高める可能性-NCNPほか

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2023年12月19日 AM09:10

不活化ワクチンでは客観的睡眠時間と抗体価上昇の相関確認、mRNAワクチンは?

(NCNP)は12月14日、mRNAワクチン接種後の客観的睡眠の長さと抗体価が相関することを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究センター病院臨床検査部の松井健太郎医長、精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部の伊豆原宗人研究員、栗山健一部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Immunology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

先行研究により、従来型の不活化ワクチンについては、客観的睡眠時間(加速度センサなどを搭載する活動量計などで評価した睡眠時間)と抗体価上昇との相関が示されてきた。1日4時間の睡眠制限を6日間実施すると抗体価上昇が半減する(インフルエンザワクチン)、一晩の完全断眠で抗体価が半減する(A型肝炎ワクチン)、ワクチン接種前後の睡眠時間が長いと抗体価の上昇が大きい(B型肝炎ワクチン)、睡眠時間と抗体価の相関は4か月以降も持続する(インフルエンザワクチン)などと報告されている。一方、mRNAワクチンを用いた研究は、主観的睡眠時間(本人の評価に基づく睡眠時間)と抗体価の相関がなかったとする報告が一報あるのみ。睡眠とmRNAワクチンとの関係は詳しく研究されていなかった。

COVID-19ワクチン未接種・健康な一般男女48人対象に解析

そこで今回は、mRNAワクチン接種前後の睡眠状態を主観的睡眠(毎日の睡眠日誌をもとに評価)と客観的睡眠(腰につけた活動量計をもとに評価)の両方を計測することで、mRNAワクチンによる抗体価獲得と睡眠との関連を明らかにする研究を行った。

研究参加者は、ホームページなどを通してリクルートしたCOVID-19に対するワクチンを接種したことのない健康な20~60歳の一般男女。参加者には睡眠日誌(主観的な睡眠の計測)および活動量計(客観的な睡眠の計測)をつけてもらい、1回目ワクチン接種前~2回目ワクチン接種後2週間まで睡眠の測定を行った。なお、活動量計は腰につけて24時間活動と休息を計測する。加速度計が入っており、動いている・いないの情報から睡眠を計測。ポジションセンサーにより寝ているか座っているかの判定も可能だ。睡眠日誌では、翌朝にその前の晩にどの程度眠れていたかを主観的に評価した。

計測終了時に採血を行い、抗体価の測定を実施。Sタンパク質に対する抗体(ワクチンでも感染でも上昇)とNタンパク質に対する抗体(感染のみで上昇し、ワクチンでは上昇しない)の両方を計測することで、SARS-CoV2の感染歴がある者は除外した。その他、常用薬を飲んでいる、研究開始1か月以内にほかのワクチン接種があるなどの者も除外した。

研究参加に同意した50人のうち、2人が脱落(参加同意後のワクチン接種忌避1人、既感染1人)し、解析対象は48人。年齢の中央値は39.5(四分位33.0-44.0)歳、女性が30人だった。ワクチン種別は、(BNT-162b2)34人、(mRNA-1273)14人。ワクチン種別の差を吸収するために、Z変換という統計的な操作を行った。

先行研究の結果から、ワクチン接種前後3日間の平均睡眠時間と抗体価を比較した。また、mRNAワクチンは1週間程度抗原を産出するという動物実験の結果から、ワクチン接種後7日間の平均睡眠時間も比較した。

2回目ワクチン接種後3日間、7日間の「客観的睡眠時間」と「」は正の相関

解析の結果、2回目ワクチン接種後3日間、7日間の客観的睡眠時間と抗体価は正に相関していた。寝ている時間が長いほど、抗体価も大きかった。この結果は、年齢、性別、ワクチン種別、副反応の強さを調整した後も変わらなかった。1回目のワクチン接種の前後3日間の客観的睡眠時間、2回目接種の前3日間の客観的睡眠時間、全観察期間の客観的睡眠時間と抗体価との間にはいずれも相関がなかった。さらに、主観的睡眠時間は上記のどの期間においても抗体価との間に相関がなかった。同研究結果から、ワクチン接種後に十分な睡眠をとることでワクチンの効果を高めることができる可能性が示された。

「接種タイミング」と「抗体価」相関なし

また、同研究ではワクチン接種タイミングについても検討したが、接種タイミングと抗体価の相関はなかった。mRNAワクチンを用いた他の研究では、接種タイミングが抗体価と相関しないという研究と、午後の接種の場合に抗体価が高いという結果がある。これらの研究では客観的な睡眠時間については考慮されていなかった。接種タイミングについては、効果がないか、あっても弱い可能性がある。

今後、睡眠制限・断眠試験など操作的な研究が望まれる

なお、同研究は広域移動制限中に行われたため、十分な参加者の数が確保できず、結果には慎重な解釈が必要だと研究グループは指摘している。また、同研究は観察研究であるため、睡眠制限や断眠試験など操作的な研究が望まれるとしている。

現時点でmRNAワクチンの適応はSARS-CoV-2に限定されているが、将来的には悪性腫瘍に対する免疫療法や酸素欠損症の補充療法など幅広い領域への応用が期待されている。将来登場するであろうmRNAワクチンに対しても抗体価を計測するとともに、原疾患に対する治療効果も調査し、睡眠の重要性について検証を検討している、と研究グループは述べている。

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