諸外国で接種後の月経周期遅れに関する報告、日本では?
国立成育医療研究センターは12月12日、女性の健康情報サービス「ルナルナ」のユーザー約1万人分のデータを用いて、mRNAの新型コロナワクチン接種後の月経周期の遅れについて研究を行い、その結果、mRNAの新型コロナワクチン初回接種(1回目、2回目接種のこと)と3回目接種直後の月経において、平均して約1日程度の周期の遅れが見られることが明らかになったと発表した。この研究は、同センター社会医学研究部の森崎菜穂氏、再生医療研究センターの細谷聡史氏、梅澤明弘氏、株式会社エムティーアイらの研究グループによるもの。研究成果は、「Obstetrics&Gynecology」に掲載されている。
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これまで諸外国では新型コロナワクチン接種後に、月経周期に遅れが生じる可能性が懸念されており、実際にmRNA新型コロナワクチンの初回接種直後に半日から1日未満のわずかな月経周期の遅れが起こることが報告されていた。しかし、日本人における初回接種後の月経周期の遅れの程度や、3回目の追加接種による影響については十分にわかっていなかった。
そこで研究グループは、日本人におけるmRNAの新型コロナワクチン初回接種・追加接種後の月経周期の遅れに関して調査を行い、新型コロナワクチン接種と月経周期の乱れに関する正しい疫学的情報を社会に提供することを目的として研究を実施した。調査対象は、「ルナルナ」アプリおよび「ルナルナ 体温ノート」のユーザーで、2022年7月12日~8月12日と、同年10月1日~10月31日を対象期間とした。登録されている月経周期などのデータ解析したほか、新型コロナワクチン接種やその副反応などに関するアンケート調査を実施した。
約1日程度の月経周期の遅れ、その遅れは接種後2~4回目の周期でほぼ正常に戻る
その結果、mRNAの新型コロナワクチン接種直後に、平均して約1日程度の一時的な月経周期の遅れが生じ、その遅れは接種後2~4回目の周期でほぼ正常に戻ることがわかった。初回接種を対象とした欧米の研究でも、mRNAの新型コロナワクチン接種後に半日から1日程度の一時的な月経の遅れが生じ、その後正常に戻ることが報告されている。これらの先行研究成果と比べても、mRNAの新型コロナワクチン接種後における月経周期の遅れの程度は日本と諸外国で変わりはないことがわかる。また他研究ではmRNAの新型コロナワクチン接種と不妊の関係性がないことも示されている。これらの先行研究の情報は、米国産婦人科学会やCDC(Centers for Disease Control and Prevention)でも引用されており、いずれもmRNAワクチン接種後の月経周期の異常は一時的で、接種後の不妊への影響はないことが言及されている。以上から、mRNAの新型コロナワクチンの月経周期への影響を過度に心配する必要はないと考えられる。
一方、初回接種後に比べ3回目接種後2〜4回目の月経では平均して0.2〜0.4日程度のごくわずかな周期の遅れが続いていたことがわかった。3回目以降の追加接種の月経周期への影響については諸外国での報告数も少なく、今後のさらなる研究が必要であると考えられる。
年齢が高い、接種後の発熱が高い、卵胞期で接種など背景因子も明らかに
また、背景因子として、年齢が高い人、ワクチン接種後の発熱が高い人において月経周期の遅れの程度が大きいこと、また卵胞期(排卵する前)で接種した場合では月経が遅れる一方で、黄体期(排卵した後)に接種した場合には月経周期は変わらない、もしくは短くなることが明らかになった。どのような接種の条件が月経周期の遅れにつながるのかといった情報が明らかになったことにより、不妊治療の計画など月経周期の情報が重要な診療行為において、研究成果が参考となることが期待される。
コロナワクチン接種に対する社会的不安解消の一助となることに期待
研究により、mRNAの新型コロナワクチン接種後に一時的かつ、わずかな月経周期の遅れが生じることがわかった。ただし、月経周期は、ストレスや環境の変化などさまざまな要因で乱れることが知られている。またmRNA以外のワクチン(ウイルスベクターや組換えタンパク質を用いたもの等)や新型コロナワクチン以外のワクチンでも同様に月経周期の遅れが生じることがわかっている。同研究は、mRNAの新型コロナワクチン接種後の月経周期の遅れとの疫学的な関連を明らかにしたものであり、mRNAワクチンそのものの生殖機能への影響を示した研究ではないことには留意が必要だ。
「新型コロナワクチン接種後の月経周期の遅れに関する根拠のある正しい知識や正しいワクチン接種行動につながる情報を社会へ発信することができたのではないかと考えている。さらに本研究結果や諸外国での同様の研究成果が、新型コロナワクチン接種に対する社会的不安解消の一助となることを期待している」と、研究グループの細谷氏は述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース