心血管疾患などと関わる超加工食品、摂取に関連の内的要因は?
東京大学は12月11日、日本人成人2,232人を対象とした全国規模の質問票調査データから、超加工食品の摂取量と、食に関する知識や技術、価値観、行動特性などとの間に関連があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科栄養疫学・行動栄養学講座の篠崎奈々特任助教、同大研究科社会予防疫学分野の村上健太郎教授、佐々木敏名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に掲載されている。
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超加工食品とは、複数の食材を工業的に配合して製造された、加工の程度が非常に高い食品のこと。市販の菓子パンや清涼飲料などが、その代表例だ。超加工食品は、脂質やナトリウムを多く含む一方で、タンパク質や食物繊維、ビタミン・ミネラル類の含有量が少ない。そのため、多く食べると食事全体の質が低下する可能性がある。また、超加工食品の摂取は肥満や心血管疾患など関連があることが報告されている。よりよい食行動への変容を人々に促すためには、食品の摂取に関わる個人の内的要因(価値観や知識など)を理解することが重要だ。しかし、このような研究はほとんどなく、超加工食品の摂取に関連する内的要因はほとんど明らかになっていなかった。
18~80歳の日本人2,232人対象、食の知識・技術・価値観・行動特性を評価
そこで今回の研究では、日本人成人を対象とした全国規模の食事調査のデータを用いて、超加工食品の摂取量と食に関する知識や技術、価値観、行動特性との関連性を評価した。研究では、2018年に日本の32都道府県に住む18~80歳の日本人成人2,232人から得られた質問票調査のデータを使用。質問票を用いて、食の知識、調理技術、食品選択に関する価値観(入手しやすさ、利便性、健康・体重管理、伝統、感覚的魅力、オーガニック、快適さ、安全性)、食品に関する技術(食事の計画など)、食行動の特性(満腹感反応性、感情的過食など)を評価した。また、超加工食品の摂取重量を、簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)とノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究者らが開発した食品分類の枠組みを用いて調べた。そして、超加工食品の摂取量と個人特性(年齢、BMI、食品選択の価値観、栄養知識、調理技術、食行動の特性)との間に関連があるかどうかを、重回帰分析を用いて調べた。
満腹感を感じやすいと摂取量「多」、女性は高年齢など3条件で「少」・男性は調理技術高で「多」
その結果、女性では、年齢が高く、栄養に関する知識が多く、食の安全性を重視する人ほど、超加工食品の摂取量が少ないことがわかった。一方、男性では、調理技術が高い人ほど、超加工商品の摂取量が多いことがわかった。また、男女ともに、満腹感を感じやすい人ほど、超加工商品の摂取量が多いことが明らかになった。
日本での公衆栄養政策決定に重要な資料
今回の研究は、超加工食品の摂取量と食に関する知識や技術、価値観、行動特性との関連を包括的に評価した世界で初めての研究だという。従来の研究では、日本における超加工食品の摂取量は米国や英国よりは少ないものの、フランス、オーストラリア、メキシコなどの多くの国々と同程度であることがわかっている。同研究成果は、日本において超加工食品の摂取に関する公衆栄養政策を決定する上での重要な資料になると考えられる、と研究グループは述べている。
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