厚生労働省は20日付で、塩野義製薬の抗菌薬「フェトロージャ点滴静注1g」(一般名:セフィデロコルトシル酸塩硫酸水和物)を薬価基準に緊急収載する。カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す薬剤耐性菌(AMR)では初の抗菌薬となる。AMRに対する抗菌薬であるため、11月30日に承認されて以降、わずかな期間での収載となった。13日の中央社会保険医療協議会総会で了承された。
同剤は、セフィデロコルに感性の大腸菌などカルバペネム系抗菌剤に耐性を持つ菌株を効能・効果とする。
MSDの「レカルブリオ配合点滴静注用」(レレバクタム水和物・イミペネム水和物・シラスタチンナトリウム)を比較薬とし、類似薬効比較方式Iで算定した額に、初のシデロフォアセファロスポリン系抗菌剤であること、非臨床試験において既存治療薬に非感受性の菌株に対する抗菌効果が示唆されていることなどを踏まえ、有用性加算I35%を適用した。
薬価は、1g1瓶が2万0203円。予測市場規模は、ピーク時の8年目に1000人、販売額は15億円。薬剤耐性菌治療薬であるため、新薬創出・適応外薬解消等促進加算に該当する。
同剤は希少疾病用医薬品で、昨年3月に承認申請が行われていたが、コロナ禍で新型コロナ感染症治療薬の審査が優先されたことなどから審査が遅れ、11月に薬事・食品衛生審議会で審議された上で、承認を取得していた。
厚労省は、AMR対策として今年度から「抗菌薬確保支援事業」を試行的に導入しており、フェトロージャが初めて採択された。
同事業では、抗菌薬を販売する製薬企業の収益の一定額を保証することによって、抗菌薬の開発を促すことを目的としている。