聞こえた音声の理解が困難なLiD、聴力検査では異常がなく気付かれにくい
大阪公立大学は12月12日、生徒と保護者を対象にした「聞き取り困難症」に関する大規模調査を国内で初めて行ったと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科耳鼻咽喉病態学の阪本浩一准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Pediatric Otorhinolaryngology」にオンライン掲載されている。
聞こえているのに聞き取れない、聞き間違いが多いなど、聞こえた音声を理解することが困難な聞き取り困難症は、LiD(Listening difficulties)と呼ばれ、小児から成人まで多くの人が日常生活で困難を感じていると言われる。
LiDは聴力検査では異常がないため周囲から気付かれにくく、聞こえているが聞き取れていないため、コミュニケーションに問題が生じるケースもあり、LiDに対する理解や配慮は必要不可欠である。しかし、LiDを専門とする検査・診療を行っている病院は全国でも少なく、診断の環境も十分に整っていないのが現状である。
研究グループは、6歳から18歳の小中高生734人とその保護者を対象に、LiDを評価する質問紙調査を国内で初めて行った。
高学年になるにつれLiD症状自覚スコアは増加、保護者の認識は乖離傾向
調査の結果、児童生徒のLiDの症状を自覚するスコアは高学年になるにつれ増加することがわかった。特に、「え?」「なに?」などと聞き返すことが多かったり、騒々しい場所では話し手に注意を向けたりすることが難しい「聴覚的注意」におけるスコアの増加が最も大きいことが明らかになった。一方で、保護者は児童生徒のLiDの症状を過少に評価する傾向にあり、両者の間には乖離があることも明らかになった。
LiD診断と支援のための手引きを制作中
今回の研究成果は、LiDに対する児童生徒とその保護者の認識の乖離を明らかにするだけでなく、LiDの早期発見や児童生徒の学習・言語習得に対する対策をとる一歩となる。「聞き取り困難に悩む当事者の人のために、診断と支援のための手引きの制作を行なっており、今後もLiDの診断および支援に関する研究を進めていく」と、研究グループは述べている。
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