転帰改善のため低年齢の治療開始が標準、乳児の多くは生後1年まで治療開始されず
中外製薬株式会社は12月11日、へムライブラ(R)(一般名:エミシズマブ)について、未治療または治療歴の短い血液凝固第VIII因子に対するインヒビター非保有の重症血友病Aの乳児を対象とした第3相HAVEN 7試験の主要解析において、有効性および安全性が裏付けられたと発表した。研究成果は、第65回米国血液学会(American Society of Hematology:ASH)年次総会で発表された。
ヘムライブラは、同社独自の抗体エンジニアリング技術を用いて創製されたバイスペシフィック抗体。同剤は活性型第IX因子と第X因子に結合し、活性型第IX因子による第X因子の活性化反応を促進することで、血友病Aで欠損または機能異常を来している第VIII因子の補因子機能を代替する。2017年11月に米国食品医薬品局(FDA)より血液凝固第VIII因子に対するインヒビターを保有する成人および小児の血友病A(先天性血液凝固第VIII因子欠乏症)における予防投与療法に対し、世界で初めて承認された。現在、インヒビター保有・非保有の先天性血友病Aに対して、あわせて世界115か国以上で承認されている。日本では、インヒビター保有の先天性血友病Aに対して2018年3月に承認され、その後、インヒビター非保有の先天性血友病A、後天性血友病Aに対しても適応が拡大されている。
複数の臨床試験により、早期からの出血抑制を目的とする治療が、長期にわたり血友病の転帰を改善し、かつ頭蓋内出血のリスクを低下させることが示されている。このことから、世界血友病連盟(WFH:World Federation of Hemophilia)の治療ガイドラインでは、定期的な出血抑制を目的とする治療を低年齢で開始することが血友病の標準治療とされている。しかし、多くの血友病Aの乳児では、生後1年までは出血抑制を目的とする治療が開始されていない。ヘムライブラは、すでに乳児に対しても承認、使用されている。出生時から皮下投与が可能であり、維持投与においては複数のさまざまな投与間隔レジメンにより柔軟な治療選択が可能だ。
重症血友病A乳児、臨床的意義のある出血コントロール達成/忍容性は良好
HAVEN7試験は、血液凝固第VIII因子に対するインヒビターを保有しない重症血友病Aの乳児(生後12か月まで)を対象に、へムライブラの有効性、安全性、薬物動態および薬力学を評価する記述的な第3相単群試験。血友病Aコミュニティと協働して実施された。
同試験の結果、ヘムライブラは臨床的意義のある出血コントロールを達成し、忍容性は良好だった。55人のデータを含む今回の解析結果において、追跡調査101.9週間(中央値)の時点で、治療を要する出血が認められなかった被験者の割合は54.5%(30人)、治療の要否にかかわらず全ての出血が認められなかった被験者の割合は16.4%(9人)。いずれの被験者でも治療を要する自然出血は認められず、治療を要した出血はすべて外傷性だった。46名(83.6%)で合計207件の出血が認められ、そのうち87.9%が外傷性だった。治療を要する出血のモデルに基づく年間出血率(ABR:annualized bleeding rate)は0.4(95%信頼区間:0.30~0.63)だった。
新たな安全性シグナルは認められず、本剤と関連のある重篤な有害事象、頭蓋内出血または死亡は報告されなかった。血液凝固第VIII因子インヒビター陽性となった被験者は、3.6%(2人)。これは、ヘムライブラの投与により第VIII因子製剤の使用が少なかったことが理由と推察された。また、抗薬物抗体陽性となった被験者はいなかった。今回の結果は、中間解析およびこれまでに実施された第3相HAVEN試験群の肯定的な結果と一致していた。
乳児での薬力学プロファイル、年長の小児・成人血友病Aと同様
なお、ASHでは、HAVEN 7試験におけるバイオマーカーの追加研究の結果も発表され、同試験の有効性に関する主要解析を支持するものだった。この追加研究により、乳児におけるヘムライブラの薬力学プロファイルは、これまでに、より年長の小児および成人の血友病Aで観察されたものと同様であることが示された。この年齢層においてはヘムライブラが結合する凝固因子の存在量が少ないものの、ヘムライブラが想定される薬力学的反応を示すことが明らかになった。
HAVEN 7試験の結果は、より広範に実施されたピボタルなHAVEN試験群から得られたデータを補完し、乳児における血友病A治療の進展、および出生時から予防投与を開始することの影響に関する洞察を提供するものだ。主要解析後には、7年間の追跡調査期間が設けられている。
乳児における出血抑制治療、早期開始を支持
同社の奥田修代表取締役社長CEOは、「重症血友病Aに対する出血抑制を目的とした治療において、静脈内投与が困難な乳児に対し、皮下投与可能なヘムライブラは治療負担を軽減する選択肢となる。今回の試験では、乳児に対して初めて、ヘムライブラが有効な出血コントロールを示した。これは、これまでに実施された臨床試験において示された幅広い年齢層におけるデータを補完し、ヘムライブラによる乳児における出血抑制を目的とした治療をより早期に開始することを支持するものだ」と、述べている。
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