さまざまな要因が関係し、個人差が大きい体脂肪
大阪大学は12月4日、ヒトの脂肪組織量を規定する因子としてHSP47を同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科内分泌代謝内科学の下村伊一郎教授、肥満脂肪病態学の福原淳範寄附講座准教授、糖尿病病態医療学のシン ジフン寄附講座助教(研究当時)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」にオンライン掲載されている。
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体脂肪量は個人差が大きく、生理・病態・環境・ホルモン・遺伝子などさまざまな要因・要素が関係しているが、それを科学的に統括して説明できる研究報告はなかった。
研究グループはさまざまなIn silico、In vivo、In vitro解析法を用い、脂肪組織を規定する因子を同定し、機能解析を行った。
脂肪組織に発現するHSP47が体脂肪量と相関
解析の結果、脂肪組織に発現するヒートショックプロテイン、HSP47が体脂肪量を規定する重要な因子であることが明らかになった。HSP47の発現は摂食、過食、肥満により増加し、断食、運動、カロリー制限、バリアトリック手術、カへキシアにより減少することが知られている。
さらに、HSP47はさまざまな体脂肪の指標(体脂肪量、BMI、ウエストおよびヒップの周囲径など)と有意に相関し、インスリンおよびグルココルチコイドによって調節されていた。また、SNP解析によるHSP47遺伝子発現量は、体脂肪量と相関を示した。
HSP47阻害で脂肪組織を萎縮できる可能性
メカニズム解析により、HSP47の欠損や阻害によって脂肪細胞のコラーゲンタンパク質の動態(折りたたみ、分泌、およびインテグリンとの相互作用)が障害され、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPARγ)タンパク質が減少することで、脂肪組織が萎縮することがわかった。今後、体脂肪量と関連する臨床応用にも期待できる。
「本研究は、生理・病態・環境・ホルモン・遺伝子などさまざまな背景・環境における体脂肪の個人差を科学的に説明できる重要な研究であり、今後体脂肪に関する臨床応用も期待される」と、研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU